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頭の中の池内慶

空想ファンタジーブログです。 私と脳内タルパたちの愉快なヨタ話。

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ちゅーっ!

 スーパーに買い物に行ってきました。
いつものように慶ちゃんはスーパーの買い物籠カートの上にのって
「ぶいん!ぶいん!」と叫びながら運転する恰好をしてあそんでいます。
剣ちゃんは私の袖をつかんで、忍ちゃんはいつもどおりむすっとした顔でついてきます。
慶ちゃんは買い物籠の中に入っているので、他の子たちより高いところにいます。
スーパーの陳列棚の中の商品も見えます。
お豆腐売り場の横を通り過ぎたとき、慶ちゃんがお豆腐のパックの上の割烹着を着て布巾を
あたまにかぶったおばさんの絵が描いたお豆腐を発見した。
男前豆腐店の「おかんのとうふ」という品物だった。
「ねえ、何でこれ、おばさんの絵が描いてあるの?」慶ちゃんが私に尋ねる。
「そりゃ、これおかんの豆腐だから。」
「おかんって何?」
「ママのことかな」
「ママ!」
ママという言葉を聞いたとたん、慶ちゃんが目を丸くした。
「ママなの!ママなの?買うよね、これ買うよね、ママだから買うよねっ!」
慶ちゃんが必死に訴えかけてくる。
ここで買わないと慶ちゃんがダウナーな状況になるので、買ってあげた。
お豆腐はけっこう好きなので問題ない。ついでに横にあった冷奴専用豆腐も買った。
この男前豆腐店の豆腐は用途によって豆腐が作り分けられていて、
その用途に従った豆腐をつかわないと、個人的にはあまりおいしいと感じない時もある。
ある豆腐はとてもクリーミーでおいしかったが、湯豆腐にするとクリーミーすぎて
ぐちゃぐちゃになる。あるとーふは、冷奴にすると固すぎる。とか。
おかんの豆腐は湯豆腐にぴったりの豆腐だ。
湯豆腐にはポン酢だが、私はミツカンのかおりの蔵をゆず風味を使っている。
カボスも買って帰ったことがあるが、自分的にはあまりおいしくなかった。
豆腐とポン酢を買って帰って水に昆布を入れて煮る。
沸騰するまで昆布をいれているときぶみが出るので、沸騰するまえに昆布を
とりのぞいて、そこに豆腐を入れてゆでる。
火が通ったところで水から豆腐をひきあげて、ポン酢をかける簡単な料理。
「ああーうまいわ~」私は思わず言ってしまった。
すると、その言葉を慶ちゃんは聞き逃さない。
「おいしいの?おいしかったら慶ちゃんもたべるお」
「だめだよ、子供がたべてもおいしくないよ」
「うそつき!さっきおいしいと言ったもん」
「しかたないなあ」
私はポン酢につけたお豆腐を少し慶ちゃんにあげた。
「ちゅーっ!すっぱいー」
慶ちゃんは体を縮みあがらせて口をすぼめ、顔をくしゃくしゃにした。
すると、慶ちゃんのほっぺたからねずみのヒゲが生えだし、口の中の前歯が大きく長くのびて、
ねずみの歯になった。慶ちゃんの頭につけてる二つのポムポムがねずみの耳になった。
「ちゅー!すっぱいーすっぱいー!」
叫びながら慶ちゃんは走り回った。
それをみて剣ちゃんが私のところに走り寄ってくる
「私もたべたい!」
「しかたないなあ」
私は剣ちゃんに湯豆腐をあげた。
すると、剣ちゃんも「すっぱいー!」と叫んだかと思うと頬にねずみのひげが生えてきて
ねずみの歯もはえてきた。
それをみて忍ちゃんがゆっくり私のところに歩いてくる。
「どうしても食べてほしいと言うなら、その豆腐、たべてあげてもいいわよ」
「いや、べつにいいよ」
「あら、どうしても食べてほしいなら私が食べてあげるっていっているのよ、この私がっ!」
そう言って、忍ちゃんは目をくわっと見開いた。
「あーはいはい、たべてください」
私は面倒なので忍ちゃんにも湯豆腐をあげた。
すると忍ちゃんはすました顔で「ちゅう、まあ、すっぱいってほどでもないけど、すっぱいってことにしてあげるわ」と言った。
すると忍ちゃんの頬にねずみのひげが生えてきて、前歯がのび、ねずみの歯が生えて来た。
「あー、はいはい、ちゅうちゅうちゅう、私ってかわいいでしょ、フッ」そういいながら忍ちゃんはその場を
歩き回った。
しかし、しばらく走り回っていると、慶ちゃんが家の廊下にある大きな鏡の横を走り抜ける。
「ん?」
慶ちゃんは何かに気付いたのか鏡の前までもどってきて、しげしげと自分の姿を見た。
「大変だよー!ねずみになっちゃったよー! どうしよう、どうしよう」
慶ちゃんは叫びながら走り回る。
慶ちゃんの叫びを聞いた剣ちゃんは「どうしよう、どうしよう」といいながら何か良いものはないか
周囲をさがす。すると、台所のテープるの上に長野なめたけの瓶が置いてあるのを見つけた。
「大丈夫だよ、ここに長野なめたけがあるよっ!」
剣ちゃんは叫んだ。
すると慶ちゃんは剣ちゃんのところに走り寄った。
「ほんとだ!長野なめたけだ!これで助かるね」
慶ちゃんはそう言うと、忍ちゃんの方を見る。
「忍ちゃん、みんなで力を合わせて元の姿にもどるよっ!」
「はいはい、結局私がいないと何もできないのね、面倒な子たちだこと」
忍ちゃんはそう言うとだらだらと歩きながら慶ちゃんのところに行く。
「それじゃ、いくよ~!」
そう言いながら慶ちゃんは両手を高くあげた。
「なめなめな~め~」
そう言いながら両手をゆらゆらとゆらし、上から下にさげていく。
「なめなめな~め~」
剣ちゃんも忍ちゃんも慶ちゃんの言葉にあわせて、同じ踊りを踊っている。
それを何度もくりかえしていると、ひげはひっこみ、歯ももとに戻っていった。
「よし!めでたしめでたしだねっ!」
慶ちゃんは言った。

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