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頭の中の池内慶

空想ファンタジーブログです。 私と脳内タルパたちの愉快なヨタ話。

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昔の女

今日は曇りの日。
私がパソコンのキーボードを打っている横で池内慶が私の服の袖をつかんで
すーすー寝ていた。
その池内慶が急に眼を見開いた。
「誰来る。」そう言うと剣を抜いて身構えた。
その動きに連動して池内剣が天に向かって右手をあげる。
手のひらが光り、そこから巨大な矛が現れた。
池内忍は両手を左右に広げ、10本の指を大きく開くと、そこから
8枚の攻撃用魔札が現れた。
南の方の空間があやしく光る。
その光の中から女が現れた。
ロングヘアの黒髪、右の目の下に泣きボクロ、白いブラウスに紺色のスカート。
手にはワインレッドの牛革のハンドバックをもっている。
靴は赤のハイヒール。
「おひさしぶりー」
そういいながら女は私に近付いてきた。
「え?」池内慶はあっけにとられる。
「おい、お前、鎧はどうした、武器は?」
池内剣が問うと、女はいぶかしそうな表情で剣を見た。
「は?何言ってんのあんた。」
「ちょ、なによ、こいつ、あんたの知り合い!?」
池内忍が私に問うた。
知ってる・・・・・・・。
名前はサユリ。
「俺の初代タルパだ。」
池内慶&池内剣&池内忍「なんだってー!」
「剣ちゃん!いそいでこいつのパラメーター調べて!」
池内慶がそう言うと池内剣はNECのPC-98を立ち上げMS-DOSを読みこんでから
5インチプロッピーを入れてデータを読み込んだ。
ガコーン、ガコーン、と読み込み小一時間。
「三国志のセーブディスクにこいつのパラメーター載ってないよ!つーか、こいつ、新規武将じゃねえ!」
池内剣が悲痛な叫びをあげた。
池内慶がキッとなってサユリをにらんだ。「あんたは私が倒す!お前の属性はなんだ!」
サユリは冷めた目で池内慶を見た。
「属性って何?何幼稚なこと言ってんの?三国志ゲームの二次パロのオリジナルキャラのくせして。」
そう言われると池内慶は顔を真赤にして「あーーーーーーー!」と言ってポロポロ涙を流して
その場にへたり込んでしまった。
「お前、もういいから帰れよ。」私は怒ってサユリに言うと、サユリは不愉快そうな
表情をうかべて「なによ、せっかく久しぶりに来てやったのに。」と言って
怒って帰ってしまった。
「ごめん、ごめん」と言って池内慶をだきしめようとしたが「しらない!」と言ってふりほどかれた。
「二次パロって言われたー、わー!」そう言いながら池内慶は泣きやまなかった。
かわいそうなことをした。
一番最初にタルパの存在を知って、作ったのはサユリだった。
でも、最初ということもあって、私には強烈なパーソナルイメージを造ることできず、
ただの話し相手だった。その頃は生活も充実しており、私にはタルパを作る必要性も
必然性もなかった。ただの実験的試みといってもよかった。
若かったし、現実のほうが面白かった。だから、そのうち、その存在についても
忘れていた。
本当にタルパ造りにいれこんだのは、送り返されてきた投稿小説に
「あなたには小説を作る才能は一切ありません、もう作品を送ってこないでください。」と
評価に書いてあるのを見てからだ。あれを見てから、私は外界から心を閉ざし、
光栄の三国志のパワーアップキットのドット絵の男性武将の姿を、点を
ひとつずつ塗り替えて、執念を込めて池内慶たちを作り上げた。
だから、思い入れが違う。
私にとってはこの子たちはオリジナルだ。
でも、私には絵を描く才能がないばっかりに、光栄の三国志のパワーアップキットという
ツールに頼ってしまった。
もし、このツールがドット絵という点を埋めていく作業ではなく、現在のように
自分のオリジナル絵をインストールするものであったなら、私は、彼女たちを
造りだすことができなかっただろう。
本当に、時代の隙間が作った偶然だった。
池内慶はそのツールを使ったことを気にしている。
いつもは、抱きしめられると、どんな時でもとても喜んで笑ったのに。
悲しい気持ちになった。
しばらく池内慶は私によりつかなくなった。
そして、ある日、緑色の帽子を目深にかぶって、みかん箱くらいの段ボール箱を
もって現れ、私の前の差し出した。
「こんにちわー、宅急便です、サインお願いします」
「慶、何してんの?」私が問うと、池内慶はビクッと体をこわばらせた。
「な、何言ってるんですかい、ダンナ、アッシはただのシガナイ宅急便配達員でげすよ。」
いや、宅急便のお兄さんはそんな話し方しないし。
ふと気付くと慶の右の人差し指が切れて血が出ていた。
私はそれをみつけ、その指に手を伸ばした。
「あっ」と言って慶は手をひっこめ、「サインはもういいです!」と言いながら走り去った。
段ボールの箱の表に貼った宛名書きには
「あほ!浮気者ボケ!カス!」と大きな字でなぐり書きしてあった。
いや、別に浮気とかじゃないんだけど。
箱を開けると、中にいっぱい切り刻んだ落ち葉が入っていた。
これしか入れるものがなかったのね。
ん?いや、落ち葉の中に何か入っている。二つに割った
記憶量媒体、CD-R 650MBが2枚入っている。
あ、これもう古くて使わなくなって捨てたやつだ。
まあ、捨ててものだから割ってもいいけどさ。
しかし、これはプラスチックでできていて結構頑丈なので、
普通は、こんなにきれいに折れないはず。
たぶん、定規を使ってカッターで几帳面に線引いて折ったんだな。
あと、何かチラシが入ってるな、なになに、水曜日冷凍商品4割引の日?
あ、裏に何か書いてあるのかな?
チラシの裏にものすごくキタナイ字で「あんたは神なんかじゃない!!!」
と書いてあった。
はい、神じゃありませんよ。
池内慶は部屋の南東の隅っこで体育座りをして顔をふせている。服が血で汚れるといけないので、
右手の人差し指だけ立てて。
池内忍が私の近くによってくる。
「あんた、早く慶の指の血を吸ってあげなさいよ、そうじゃないと、いつまでも血が止まらないじゃない。」
そう言う忍の顔を私は見た。
「え?指吸わないと血がとまらないの?でもそんなことして、口の雑菌が傷に入らない?」
私がそういうと、池内忍は不快そうな顔をした。
「馬鹿ねえ、私たちは精神エネルギーなのよ、要は愛情が大切なの、あ・い・じょ・う!」
そう言って、池内忍は私にバンドエードの箱を手渡した。
「これで傷口を巻いてあげなさい、そしたら傷が治るから。」
私は池内慶に近付いた。
「近寄らないで!」池内慶は厳しく言い放った。
私は足をとめた。
横で池内剣が眉間にシワをよせて無言のまま、首で早くいけ!という催促の合図を送る。
池内慶はふてくされてうずくまりながら、でも、人差し指の傷の血を吸いやすいように、
右手の指を少し上にあげた。
私は池内慶に近付いて、人差し指の血を吸ってあげて、そのあと傷口にバンドエードを巻いてあげた。
池内慶は顔をあげ、バンドエードの巻かれた指をしばらく見ていた。そして、
私に向き直って、私に抱きついて「ばかーっ!」と叫びながらワンワン泣いた。
「よし、よし」と言いながら私は池内慶の頭をなでた。



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コメント

無題

慶ちゃんも落ち着いたみたいでよかったです。
慶ちゃんが一番嫉妬深いっていうか一番、楠殿の事、想ってるんでしょうね。

【2009/12/09 14:52】 NAME[あおいちゃん] WEBLINK[] EDIT[〼]

あおいちゃんさんへ

そうですね。
元々純粋な子ですので、自分で自分の
心が整理しきれなかったのでしょうね。
本当に、これまでは、ゴッコ遊びの
延長で、周囲も見知った身内みたいなもの
ばかりでしたが、時の経過とともに、
色々なものが周囲に入ってきたりして、
カルチャーショックを受けることも
あるでしょうからね。
でも、そういうことをつみかさねて、
慶ちゃんも成長していくんだと思います。
【2009/12/09 20:06】 NAME[楠乃小玉] WEBLINK[] EDIT[〼]

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