スーパーに買い物にいくと、いつも精霊たちはついてくる。
この日は、たまたま雪印裂けるチーズの燻製味が食べてみたかったので、
プレーンと燻製味と2本かった。
それをみて慶ちゃんは大喜びだ。
慶ちゃんは裂けるチーズを裂くときにできるビラビラな感触が好きで、チーズを裂くところを
興味深くみている。だから、慶ちゃんは裂けるチーズを私が買うと、自分が買ってもらったと
思ってすごく喜ぶ。
「いつも慶ちゃんばかりでずるいわよ!カマンベールもたまには買ってよ!」
忍ちゃんが怒って言うので、「あ、うん」と言って、なにげなく横にあったカマンベールも
買い物籠にいれた。
しばらく買い物をしていたが、いつもは売り場で騒いでいる剣ちゃんが今日はだまっている。
どうしたんだろうと思っていると、いきなり火がついたように泣き出した。
「わーん!私だけ何も買ってくれない!私だけ仲間外れにされてる!なんでー!なんでー!」
「い、いや、全然そんなつもりはないから、偶然だから。」
と言ってなだめるも、剣ちゃんは体を震わせて泣き止まない。
いつもはおとなしくて、一番扱いやし子だけに驚いた。
それからお菓子売り場に行って、クッキー生地の中にチョコレートがはいっているプッカという
お菓子を買い物籠にいれると、剣ちゃんが「これ、私のだかんね!私が買ってもらったんだからね!」
と必死に主張してくる。
なんだか、かわいそうというか、いとしい気持ちになって、その近くにあった
リラックマのプリッツも「これ、剣ちゃん用だよ。」と言って買い物籠に入れてやった。
はっきり言って、買うつもりなかった余計な出費だけど、剣ちゃんがよろこんでくれるならいいや。
すると剣ちゃんは「わーい!わーい!二つも買ってもらっちゃった、忍ちゃんは一つでしょ!」
と言って忍ちゃんに主張していた。すると忍ちゃんは「ホホホ、これだから庶民は。カマンベールチーズは、289円、それにくらべてあなたのプッカとリラックマのプリッツは二つ合わせても200円程度じゃない。
セレブの恐ろしさを思い知るがいいわ!」と言って胸を張った。
「いいもん!値段が安くても、剣ちゃんは二つ買ってもらったもん!ねー!」と私の方を見ていった。
私は苦笑いするしかなかった。
そういえば、昔自転車旅行で九州を旅行したとき、小さな稲荷の祠に大きな狐の置物と小さな狐の
置物があったので、勝手に親子だと判断して、「おかあさんには10円ね、子供さんには1円ね」と
言って、大きい置物の前に10円、小さな置物の前に1円おいてきたことがある。
その日は、山を越えて湯布院に行く予定だったが、1日で越えられる距離ではないので、
山中にあるユースホステルに宿泊する計画にしていた。
しかし、山中のガソリンスタンドで聞いてみると、すでにそこは閉鎖されているという。
しかたなく、日が暮れてからも真っ暗な山道を登ったが、その途中で、森の木々が
揺れて「コーン!」という鳴き声がして、何かにずっと追いかけられて、ものすごく
怖かったことがあった。
そのあげく、1メートルほど下の側道に自転車ごと落ちて、肋骨にヒビが入ったことがあった。
あのときはさすがに、もう死ぬのかなと思ったけど、なんとか這い上がって、
通りかかった自動車に助けられ、命拾いしたことがある。
今から思えば、あの稲荷神社で小さな稲荷人形と大きな稲荷人形に格差をつけたのが
よほどの屈辱だったのかもしれない。
霊的存在に対しては、相手の大きさ、力量、神社の格などについて人間が比較して、
格差をつけてはいけないのだなあと、あらためて思うきっかけとなった。
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