このまえスーパーに行くと、果物売り場にイチゴの紅ほっぺが売っていました。
背中から池内剣が出てきて「紅ほっぺだ!紅ほっぺ!」と大声で叫びました。
大声に私は肩をすくめましたが、当然聞こえているのは私だけです。
前から池内剣がほしがっていたイチゴです。
何度か売り切れとかで買い逃していたので、買ってやろうと思いイチゴに手を伸ばしましたが、
背中から池内忍が出てきて毅然つした態度で胸をはって言葉を発しました。
「おまちなさい!この紅ほっぺの値段をご覧になったのかしら?」
そう言って池内忍が指さす方向を見ると「紅ほっぺデラックス425円と書いてあった。
通常イチゴ売り場のイチゴは289円から389円くらいまでが相場なので、これはちょっと高い。
「日本の国家予算が財政赤字にあえぐ中、こんな無駄遣いをしていいと思っているのかしら?、
子供たちの未来はどうなるのかしら!?同じ425円なら博多あまおうを買うべきよ!」
と横に並んでいるあまおうデラックスを指さした。
どっちにしろ、イチゴは買えって言うんだな。
「お前にはこの前、奈良のあきひめを買ってやっただろ。」そう言って私は買い物かごに
紅ほっぺを入れた。
「ひどい!これはひどい!これは国民に対する背信行為よ!次の参議院選挙で
あんたなんか落選いなさい!」そう叫びながら池内忍は背中にひっこんでしまった。
いやいや、私は別に政治家じゃないし、立候補なんてしてねーし。
イチゴを買ったあと、私の好きな宮崎産と熊本産のプチトマトを買ってかえる。
ひとパック148円、お買い得だ。
ふと、髪の毛を売ったお金で卵を買ってかえる大正時代の親子連れのことを思い出した。
今は安い時代で贅沢なものが食べられる。バナナだってひと房100円だ。
一時期、バナナダイエットが盛り上がって、店頭からバナナが消え、八百屋で800円で
売っていたこともあったバナナ。
一時は、納豆が店頭から消え、寒天が店頭から消え、困ったもんだ。
いまでは店頭に山積みでおいてある。
日本人は移り気だ。
わーっとも盛り上がってすぐに忘れてしまう。
背中から池内慶が出てきて私の袖を引く。
「見て!蟹カマボコが半額だよ!」
池内慶の声を聞いて池内忍も勢いよく背中から出てくる。
「きゃー!半額よ!半額シールが貼ってあるわ!これを買って日本の景気浮揚策にするのよ!
断固として購入を要求するわ!」
私も、けっこうカニカマボコは好きなので、3つ買って買い物かごに入れた。
「きゃー!半額よ!半額!」と言って池内忍が喜びの声をげた。
こいつらは別にカマボコを食べるわけじゃない。
半額というお得感を私が感じた、その精神エネルギーを食べえいるのだ。
とりあえず池内忍の機嫌が直ってよかった。
家に帰ってさっそくイチゴを洗い、「はい、池内剣のぶん」といってイチゴをほうばると、
池内剣が私のイチゴを食べた精神感覚を味わってよろこんでいた。
そのあと、池内慶や池内忍にやった。
あれだけあまおうを買おうと主張していたのに、紅ほっぺを食べる段になると、
池内忍も喜んで食べていた。
現金なもんだ。
あまおうも、粒が大きくてプリッとしてるので、今度買ってみようかなと思った。
イチゴを食べ終わると、父親が知り合いから非常に大ぶりのイチゴをもらって帰ってきた。
「紅清水」と呼ばれている幻の高級食材だ。
品種は「さちのか」だが、これを非常に厳選した特殊農法で育てたもので、
ものすごく甘くておいしい高級品だ。
地元の農家の知り合いの伝手がなければ、高級料亭のデザートなどでしか
お目にかかれない代物だ。
「キャー!紅清水よ!清水国明は犬わんわんわん!猫にゃんにゃんやん!カエルもアヒルも
があがあがあよ!」
紅清水を見て池内忍は歓喜の声をあげた。
父親が声をかける。
「知り合いからもらってきたんだけど食べるか?」
私は答えた。
「もうイチゴたべておなかいっぱいだからいらない。お母さんと一緒に食べなよ。」
それを聞いて池内忍は激怒して私の頭をわしづかみにした。
「何考えてるのよあんた!食べなさい!これは命令よ!」
しかし、私がおなかいっぱいで食欲ないのに無理にたべても、池内系たちはおなかいっぱいで
苦しい気分しかあじわえない。味なんてわからないから、こいつらのために無理に食べるわけには
いかないのだ。
「無理して食べても、お前らおいしさ味わえないでしょ、あきらめろ。」
そううと池内忍は悔しさに足をふみならしながら
「キー!なんてことなの!私は悲劇のヒロインよ!この荒ぶる気持ちを静めるためには、
死霊の盆踊りをBGMにビリーズ・ブート・キャンプを踊るしかないわ!」
と叫んだ。
池内忍はどこからかソニーベータマックスのビデオデッキを取り出してきて、
それをテレビに接続。
死霊の盆踊りの映画のビデオテープをビデオデッキに入れた。
「でも、ビデオデッキをテレビに接続しちゃったら、ビリーのDVD見られないよ。」
池内慶がつっこみを入れた。
それでも忍はかまわない。
「そんなの、私が大体おぼえてるわよ、いい?私の声に合わせて踊るのよ!」
そう叫ぶと池内忍はパンパンパン!と手を叩きだした。
「ハイ!ハイ!ハイ!あるある探検隊!あるある探検隊!」
その声に合わせて池内慶はノリノリで踊りを踊る。
池内剣は付き合いでやる気なさそうに踊っていた。
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イチゴの品種に詳しくなりました(^^)
いつになく、忍ちゃん激しいですねえ(笑)