花藤子さんの先輩に花シメコさんという先輩がいる。
前にシメコさんが住んでいる南の島に藤子さんが遊びに行ったとき、港まで迎えにきてくれたそうだ。
南の島に用事があり行く人が近所にいたので、その人の背中に憑依して行ったわけだが、
藤子さんに会うなりシメコ先輩は「あら~久しぶり~」と言いながら藤子さんの頭をワシ掴みにして
素早く首を直角にへし折った。
ゴキッ!という音とともに藤子さんの首は直角に曲がった。
藤子さんはにっこりと笑い「いやだわ、シメコ先輩、私ってばツタ系の精霊だから首をへし折っても
死にませんよ。」といった。
するとシメコ先輩は「あら~ん、わかってるわよん、ほんの挨拶代りよ、精霊殺したくなったら、
この島には一杯いるから殺し放題よ、べつにあなたを殺したいとは思わないわん。」と言いながら
島を案内して回ってくれたそうだ。
肌は薄い緑と白が混ざったような色、目は真っ赤で瞳孔がイチジクが割れたようにまだらになっている。
白の着物の下の赤黒い袴をはいている。
趣味は精霊に巻きついて絞め殺すことである。
島ではシカ肉のステーキ屋やトビウオの煮つけ、朝日蟹の丸蒸しなどを人間たちが食べているところを
見学し、森の中に入って、森の精霊たちが泣きながら逃げるのをシメコさんが嘲笑しながら
闊歩する後ろから藤子さんがついていっていった。
森の中にずっと線路が続いている。
その上をシメコさんの後ろから藤子さんがついていく。
「どうしてこんな山の中に線路があるんですか?」
藤子さんがそう尋ねると、シメコさんは「森の木を人間たちが盗むためよ。」とさらりと言った。
長い、長い人工植林の林いくら進んでも線路は続き、人工植林も続く。
藤子さんは少し怖くなったそうだ。
ここは山の中なのにまったく精霊がいない。まっすぐに伸びた人工植林。
「悪魔の森よ」シメコさんはつぶやくように言った。
「あら、そうですの」藤子さんは返答に困ってそう答えた。
「私は木の精霊をいびり倒しておびえさせるのは大好きよ、でも、森は殺さない。
だって、森を殺したら精霊がいなくなっていびれなくなるから。でも、こいつら杉の人工林は
黙って森を殺す。無言で着々と。」
シメコさんはつぶやくように言った。
そうしているうちに、20キロも歩いただろうか、やっと人工林から抜ける。
苔むした大地。湧水が流れている。
霧の中に粒子のような霊がいっぱいただよって迷っている。
藤子さんはそれを不思議そうに見た。
「あら、木霊ではないんですね。」
それを聞いたシメコさんは無表情で目をほそめた。
「そうね、昔木を山中から切り出すために何百人、何千人も動員され、死んでいった
樵たちの魂ね。河原の落ちている人面石も人間たちは森の精霊って喜んでいるけど、
あれも伐採中の事故で死んだ樵たちを川や海辺に捨てて、その魂が凝着したものなのにね、
なにもわかっちゃいないわ、なにも。」
そう呟きながらシメコさんが進むと少し開けた場所の岩の上に出た。
「タイコ岩よ」シメコさんが言った。
そこから眺めた渓谷の風景は絶景だった。
「奇麗ですね。」
藤子さんがつぶやくように言った。
ふと、藤子さんの耳元で「ぶ~ん」という羽音がした。
「あら」
見ると、一匹の蠅が飛んでいた。
そして、岩の上に落ちているクッキーのかけらにとまって、それを舐めていた。
「こんなところにもハエがいるんですね。」
藤子さんがそういうと
シメコさんは無表情で「人間たちがつれてきたのよ」といった。
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シメコさんも、ツル系の植物の御眷属なんでしょうか?
大勢の人が連れてこられて死んだ魂を
木霊といって喜ぶ観光者。
(私もその1人でした~^^;;)
人間は、どこに行っても
その場所の大切な自然を破壊してしまうことに
なるのですね・・
人間の存在自体が自然にとって悪なんでしょうか。
複雑です。