「ねえ、ちょっと、ちょと聞いて、ニュースよ!」
最近カモにする憑依対象の人間がみつからず、景明が時々遊びに来る。
しかも、いつもくだらないネタを持ってきては池内系の連中と何時間も話していく。
よくもまあ、そんなくだらないネタで何時間も話せるもんだ。
ほんとうに、こいつらはお話が好きだ。
「それでね、インターネットで見たんだけど、三ツ星レストランで食事おごった帰りに
喫茶店に寄った男がさあ、女がここはどうしても自分が払いますって言うから2000円
払ってもらったんだって。そしたらまー、金払わせたあとから女の不機嫌な事、不機嫌なこと。
それで、男は釈然としないで、2000円くらい払ってもいいじゃないかって
喪女板にスレッド立てたわけよ、そしたらまー、セコイだの、お前なんか二度と
デートしてもらえないだの、叩かれまくってるわけ、もう、それ見てて、私ったら
可哀想で、可哀想で、涙がちょちょぎれたわ。」
そう言って、景明は拳を握り締めて力説していた。
「そだね、かわいそうだよね、慶たんだったら、またデートしてあげるよ。」池内慶がそういうと
景明は真顔になって「あら、そんなセコイ男と二度とデートするわけないじゃない、
可哀想とデートは別腹よ!」と言った。
池内忍と池内剣が深くうなづいている。
それを見て池内慶は少し不機嫌になった。
「じゃあ、自分でお金払うって言っといて、本当に払わされたら不機嫌になった女が正しいの?!」
池内慶がそう言うと、景明は軽い溜息をついた。
「正しいわけないじゃなーい、女はね、男の写し鏡なの、殿方が笑っているときは、
女は笑っていなければならないのよ!たとえどんなケチな糞男でも、その場では笑ってやり過ごし、
今後は二度と会わないのが気高いセレブの嗜みというものだわ。」
それを聞いて池内慶は顔をしかめた。
「えー慶たんわかんなーい。」その言葉をついで景明は「そうよねー、だからこんなケチくさい男ん家に
憑依してるんだもんねー、慶たんは。」と言った。
「そうだ!そうだー!」忍と剣が手を叩いて喜ぶ。それに対して景明は「ねー」と言って二人に愛想をふりまいた。
居候しているのは、忍も剣も一緒じゃねーか、この鏡の妖精、それがわかっていて、空気読んで二人に迎合しやがった。
池内慶はプーと頬をふくらませ、一人でパソコンのPC-9801にゼビウスの5インチフロッピーディスクを
差し込んでインストールしはじめた。
ガコーン、ガコーン、ガコーンと音を響かせながらパソコンがデーターを読み込んでいく。
そして、「バンバン!バンバン!バババエンバンババンバン!」(by円盤戦争バンキッドOP)
と鼻歌を歌いながら一人でゼビウスをはじめた。
「なんだよ、ふてくされて。」池内忍が言うと、景明は「かわいそうだから、そっとしておいてあげましょー。」と
フォローを入れた。何なんだこいつの気遣いは。
「だいたい誘われた時に、男が女に一円も払わせない器量の持ち主か、見極められなかった時点で
女の負けよー、2000円くらい軽い勉強料だと思って払っときゃいいのよねー。」
景明は話を続けた。
「でもなあ、何十人もの男にたかってタダ食いだけをしてると、女に因縁食いがたまって、嫁に行き遅れるからなー。」
池内剣がほおづえをつきながらつぶやいた。
「そうは言っても、飯食わせてもらうたびに自分の肉体をあげてたら、残飯食わされて最後にトンカツにされちゃって
自分が食われちゃう豚といっしょじゃない。ようは少数の金持ちから相手の懐が痛くならない程度の
金額をたかるのが最上の策ね。あんまり多くの男連れ歩いてるとバレル可能性も高くなるしさあ。」
景明がそう言うと池内忍がはたと思いついたように口を開いた。
「でもさ、逆に考えると、日ごろのデートでは割り勘にしといて慎ましやかな女性だと金持ち男に
思わせて、結婚したら夫が会社行ってる間に夫のカードで豪遊ってのがベストじゃない?それなら
因縁食いもたまんないしさー。」
それを聞いて景明はパン!と手を叩いた「さすが賢女!言うことがクレバーね、その調子で大金持ちの男を引っ掛けるよの!」
景明はそういって池内忍をおだてたが、どうせこいつら3人とも精霊で、人間の男から姿は見えないのである。
永遠にパーチャル恋愛シュミレーションやってろ。
PR
善徳の貯金しなさい!!と言ってあげたい(笑)
精霊なのに恋愛話好きなのはなんなんでしょう?
人間の真似したいのかな?