謹慎期間がすぎて、めでたく舌を返してもらった池内忍ではあるが、あからさまに態度が
悪くなった。
「結局、私みたいな正直者が損をする世の中なのよね。」などと言いつつ、
背もたれのついた椅子にもたれかかって足を組み、スパスパとタバコを吸っている。
昔はこんな子じゃなかったのに。
でも、おかしいよね。「こいつ、水の精霊みたいに言ってたけど、全然火のついたタバコ吸ってるじゃん。」
私がそう言うと池内慶が答えた「ちがうよ!あれはオリオン株式会社のココアシガレットだよ!」
そういえば、そのようなタバコ型のチョコレートを昔買って食べたことがあるな、チューブ入りの
半生チョコレートとかも好きだった。あ、そうそう、母を訪ねて三千里のマルコの柄がパッケージに
印刷してあるやつだった。って、そんなことはどうでもいい。
でも、おかしいよね、「お菓子のタバコって言うけど、ちゃんと池内忍の口元から煙が出てるよ。」
私がそう言うと池内慶が答える。「ちがうよ!あれは念力けむりだよ!」
「念力けむり?何それ?」私がそう言うと、池内慶の表情が驚愕の表情へと変わる。
池内慶「念力けむり知らないの?!おばけけむりだよ!カードけむりだよ!」
私「知らんよそんなもん、お前らの念力か何かか?」
そういうと、横で見ていた池内剣がちょと軽蔑の混じった表情で眉をしかめて言った。
「時代遅れだなあ、念力けむりも知らないのか、ついこの間、昭和30年頃の駄菓子屋によく
売ってた。」
「知るか!そんなもん!!!まだ生まれてないわ。」
私がそう言うと、池内慶は少し同情したような顔になり、そこからお化けの絵が描いたカードを
取り出してきた。そしてそのパッケージを開くと、中に塗ってある粘着液を人差し指と親指に
なすりつけた。
それを小刻みに叩くようにこすると、粘着物が糸を引いて、煙のように空中を舞った。
池内忍の方向を見ると、たしかに親指と人差し指を小刻みに動かしている。
そこまで細かいフェイクしなくても・・・・。
「あーあ、私もう大人の女だから、これいらない。」そう言いながら池内忍は自分の
着物のそで口から飛行機の絵の書いた箱を取り出してきて、床に投げ捨てた。
お前の袖は四次元ポケットか・・・。
それを見た池内慶が目を輝かせた。
「うっわっ!ツバメのソフトグライダーフルセットじゃん!!!」
そしてその箱に飛びついた。
「なにっ!ツバメのソフトグライダー!」その言葉を聞いた池内剣の目の色も変わった。
池内慶はその大きな箱から薄い紙包みを取り出し、その中から
発泡スチロール製の薄い板に
飛行機が印刷されたものを取り出してきた。
池内剣も無言でそれを取り出して一生懸命組み立てる。
「四式戦闘機疾風甲型だぞ!ぶいーん!」池内慶はそう言って組み立てた飛行機を手に
もってそこら中を走りまわる。
「俺はグラマンF6Fヘルキャットだ!ひゅー!」そう言って池内剣も走り回る。
「まったく、あなたたちオコチャマね~」走り回る二人を見ながら池内忍はアンニュイにつぶやく。
池内慶「最後は疾風が勝たなきゃだめなんだよ!だだだだあ!」
池内剣「そんなの関係あるか!どどどどどっ!」
二人は飛行機を手に持ったまま走りまわる。
「いいかげんにしなさい!」ついに池内忍は怒って立ち上がった。
そして、二人から飛行機を取り上げる。
「いいこと!これは、こうして遊ぶものよ!」
そう言って池内忍は二つの飛行機を軽やかに投げて飛ばした。
二つの飛行機は綺麗に1回転宙返りをして滑空して飛んで行った。
「おおーっ!」池内慶と池内剣は目を見張って感動の拍手をした。
どや顔をしている池内忍。
お前ら全員子供だよ。
私もふくめて。
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でも、本当にいいとこ見せるのは恥ずかしいし皆、私を見て~っていってるような感じがします。
私も40年代生まれですが、そのお話全部わかってしまいます^^昔は道に石灰石見つけてはへのへのもへじ書いてケンケンパしたりとか、平和なかんじで誘拐とかの心配もなかったし、な~んてなつかしんだりします^^