慶ちゃんたちをつれてスーパーに行ってきました。
というか、スーパー大好きでいつもついてきます。
今回はお惣菜を買ってあげました。
今日のお惣菜はオール50円の日です。
慶ちゃんはケチャップがかかったオムレツを買いました。
忍ちゃんは豆腐と卵をこねて作った半円形のお惣菜を買いました。
剣ちゃんは中にぽととサラダが入ったハムカツを買いました。
「オムレツはお惣菜の王道だよ!スパゲッチとならぶお子様の大好物だよ!」
と言って自慢します。
「ハムカツのほうがすごいよ!中にポテトサラダが入ってるんだよ!一番手間がかかってるから
一番すごいんだよ!」
自慢合戦をする二柱を忍ちゃんは冷ややかに見ています。
「忍ちゃんのいちばんちいさいよ!忍ちゃんの負けだね!」
慶ちゃんがそういうと「ふっ」と忍ちゃんは鼻で笑いました。
「あら、同じ五〇円で私の買ったお惣菜が一番小さいってことは、質量辺りの価格が一番高いってことじゃない。つまり、私の買ったたまご豆腐ミックスお惣菜こそ、お惣菜界のセレブなのよ!」
忍ちゃんが言い切ると慶ちゃんと剣ちゃんは「お~」と感心して拍手しました。
それで家に帰ってくると、母親が裂けるチーズを二本買ってきて、私にくれました。
「はい、これ好きなんでしょ」
「やったー!」慶ちゃんはそれを見て大喜びです。しかし、しばらくしてその場の険悪な空気に
気づきます。
忍ちゃんと剣ちゃんがどよ~んとよどんだ目で慶ちゃんを見ています。
この裂けるチーズは棒状になっていて、二つで一セットとして売っています。
「二人に一つあげるから、二人で分ければいいよ!」
慶ちゃんは気をつかっていいました。
「いらないわよ、あなたのおふるなんて。セレブをバカにしないでちょうだい」
忍ちゃんは冷たく言い放ちます。
「うう……」慶ちゃんは困ってしまいました。
こうなると私の登場です。
「しかたないから、忍ちゃんと剣ちゃんの分を今からスーパーに買いに行くよ」
そういうと剣ちゃんも忍ちゃんも納得の笑顔を浮かべました。
私はスーパーに行く道すがら考えます。
慶ちゃんはチーズを2つもらったので、二人にも二つずつ何か買ってあげないといけない。
でも、前もそうだったけど、慶ちゃんに何も買ってあげないと慶ちゃんがすねる。
そうすると、ネズミ算式に買い物が増えていくじゃないか。
そう考えていると、慶ちゃんが肩口に乗ってきて、ねずみの歯とひげをつけて
「ちゅー!」と言った。不覚ながら、かわいいじゃないか。萌えてしまった。
スーパーにつくと、まず、剣ちゃんに新製品の十勝ボーノチーズというのを買ってあげた。
忍ちゃんには雪印カマンベールチーズ。
二つ目は剣ちゃんがクリームチーズをほしがったので、雪印のクリームチーズを買ってあげた。
忍ちゃんはキリーのクリームチーズをほしがったが、キリーは値引きしないので、ちょっと値段が高い。
ちょっと困っていると、忍ちゃんが溜息をついた。
「ふーっ、そんなに気をつかわなくていいのよ。いりもしないものを私たちに気を使って大量に
買ってるんでしょ。別に私は一つ買ってもらったらそれでいいから、律儀に正確に全員分の数を
揃えなくていいのよ。あなたはやさしすぎるし、真面目すぎるのよ、もっといい加減に神経使わずに
生きなさい。」そう言って、キリッツとポーズを決めた。
「あ、忍ちゃんいらないなら、私、もう一本裂けるチーズスモークタイプ買うね」
慶ちゃんが裂けるチーズに飛びつく。
「あんた! ちゃんと人の話し聞いてたのかしらっ!」
忍ちゃんは激怒する。
「聞いてたよ、人に気を使わずにいい加減に生きたらいいんでしょ。慶タン、繊細すぎるもんね」
「どごが繊細なのよ! このウスラトンカチがっ!」
忍ちゃんの心遣いもうれしいし、慶ちゃんの能天気なのも楽しいので、私は
二柱のやり取りを聞いていて、心が和んだ。
気分がいいので、奮発して、慶ちゃんにスモークチーズ、
忍ちゃんと剣ちゃんには雪印のクリームチーズを買ってあげた。
でも慶ちゃんにチーズを買ってあげたので、忍ちゃんと剣ちゃんにも何か買ってあげなければならない。
出費がかさむ。
「心配は無用よ!」毅然とした態度で忍ちゃんが言った。
「ここはお惣菜大作戦よ!」
そうだ、今日は五〇円お惣菜の特売セールだった。
お惣菜売り場に行くと、もうお惣菜のトレーは片づけられており、五〇円のお惣菜が
二つずつ、パックに入れられて一〇〇円で売っていた。
ハムカツはすでに売り切れていて、たまごと豆腐の練り物とオムレツが残っていた。
「はい、あなたはオムレツね。」忍ちゃんが勝手に剣ちゃんの取り分を決めた。
「えー、オムレツは慶ちゃんのじゃん」剣ちゃんはちょっと不満げだ。
「何言ってるの、あんたおこちゃまなんだから、オムレツがお似合いよ!」
「はーい」剣ちゃんはなんとか納得した。
「私はこれね」忍ちゃんは迷わず、卵と豆腐の練り物を指定する。
それを見た慶ちゃんが指をさす。
「あー、これ二個はいってる。私損だー!」
「何言ってるのよ、あんたが買ってもらった裂けるチーズは特売でも178円で私の100円お惣菜より
値段が高いじゃない」
「えー、だって、だって、二つはずるいよ!不公平だよ!慶ちゃんだけ損だ!」
慶ちゃんは納得しない。
二柱のやり取りを見ていた剣ちゃんが、慶ちゃんが買ってもらった裂けるチーズスモークを凝視する。
「あのー、これ、二つで1個だよね。
慶ちゃんは一瞬の沈黙のあと、裂けるチーズに目をやる。
「……まあ、今日のところは慶タンが我慢してあげるよ、これで貸し1つだね」
半笑で慶ちゃんが言った。
「何が貸しよ!バカにするなー!」
忍ちゃんが怒って慶ちゃんを追いかける。
慶ちゃんは「キャー!」と言いながら逃げ回る。
そうしている二柱はほっておいて、私はレジに向かった。
レジの隣に、剣ちゃんが好きなベジップスが置いてあった。
剣ちゃんは少し遠慮がちにチラッと私に目配せする。
「今日はだめだよ」
私がいうと、剣ちゃんは素直ににっこり笑って「うん、わかった」と言った。
なんか、みんないい子たちだ。
PR