大阪の地下鉄に乗った時、たまたま先頭車両だった。
先頭の窓から線路が見える。
すると慶ちゃんが出てきて、大興奮で線路を見たいと言ってきた。
「ういーん!ういーん!」と言って電車を動かしているマネをしている。
東梅田から谷町線に乗り、しばらく電車が走っていると電車はまっすぐ走っていった。
途中、オレンジの電灯がともっていて慶ちゃんが「オレンジだよ!オレンジ!」と興奮して
指をさしていた。電車は南森町まで行き、そこから電車が発進すると、電車は上り坂になっていた。
「うひょー!地下鉄ってぜんぶ平面を走ってるのかと思ったら坂道もあるんだね!」
慶ちゃんが興味津々で線路を眺めていると、しばらくして右に線路が急カーブした。
ギリギリギリッツ!と鉄のきしむ音がして電車に微振動が伝わってくる。
「キキキキー!
風もふるえる ヘアピンカーブ 怖いものなどGOGO GO !」
と叫びながら慶ちゃんがハンドルをきるマネをした。
しばらくすると今度は右に緩やかに線路はカーブした。
そして天満の駅につく。
「面白かったね!」
慶ちゃんは上機嫌だ。
「前は列車の一番後ろから眺めてたけど、後ろからだとカーブとか坂道とか全然分からなかったよ。
やっぱり、前を見てないと、目の前の坂道とかカーブって分からないものなんだね!」
慶ちゃんがそう言った。
「そうだね、後ろばかり見ていたら将来のことは分からないね。」
私はそう答えた。
すると背中からのっそりと忍ちゃんが出てきた。
「誰がうまいこと言えっていったのよ」
天満の駅を降りると、いつもはすいている駅の構内が黒山の人だかり。
いったい何があったのかと思って周囲を見回すと、造幣局の桜の通り抜けのカンバンがかかげてあった。
「ああ、造幣局ってこんなところにあったんだ」
日頃意識しないけど、意外なところでつながっている。
「ねえ、桜見に行こうよ!」
剣ちゃんが背中から出てきて言った。
「だめだよ、今日は用事があるから」
「じゃあ今後来たときに行く?」
剣ちゃんは言った。
「だめよ、来週にはもう桜は散っちゃってるから無駄よ」
冷めた声で忍ちゃんが言った。
「へー桜の花って短命なんだねー」
残念そうな剣ちゃん
「希少価値があるから人は見に行くのよ、桜色のゴキブリとかが大量発生したら、
きっとみんな桜が大嫌いになるから」
忍ちゃんは身もふたもないことを言った。PR