ぱらりら!ぱらりら!ういーん!ういん!ういん!ういん!がががが!
家から50メートルほど向こうにある国道を暴走族の集団が爆走している。
うるさいなあ、仕事に集中できない。
と、思っていると、キキキキー!バーン!とけたたましい音がした。
事故りやがったな。
ま、いいか、他人ごとだしどうでもいい。
静かになって仕事に集中できるし。
私はそう思ってパソコンに向かって字を打ち始めた。
その頃、道路では事故った暴走族の兄ちゃんが苦しんでいた。
「うーっ、くそったれがあ。」うめいている兄ちゃんの上に白いフワフワした霧がういている。
それは人間の目には見えない。
その霧は次第に実体化して上半身白ワンピースの女の姿になった、ストレートのロングヘアーで
前髪はきっちりと切りそろえてある。
胸ののところははだけていて、そこから大きな胸と黒いブラジャーが見えている。
上半身の姿は明確化したが、下半身はぼやけていて霧のままだ。
その女は自分の眼下で呻いている兄ちゃんを見てニンマリと笑う。
「あーら、この道路は事故多発地帯なのに危険運転をしてくださるとは、
わたくしをお舐めあそばしてくださいましたわねえ。」
そういいながら女は黒いブラジャーからナイフを取り出して、苦しんでいる兄ちゃんの脚を
ガリガリホークでひっかいた。
「ぐわっつ!」兄ちゃんはうめき声をあげる。
「おい!大丈夫か!」暴走族の仲間が走り寄ってくる。
そして倒れている兄ちゃんの脚を見た。
「ひでえ、足がアスファルトにこすれて血だらけになってるよ、」
女は地面の土に一生懸命手をこすりつけて、それを兄ちゃんの体中の傷に刷り込んだ。
「バイ菌入れ~バイ菌入れ~、感染して腐って死ね~、あら楽しい。」
女はニコニコしながらうれしそうにその作業をつづけた。
すりつけられるたびに兄ちゃんはうめき声を上げる。
しばらくして救急車が到着し、兄ちゃんをタンカに乗せ、傷口を消毒液で洗浄した。
それをみて女は冷めた顔になってふわふわと上空に浮かんでいった。
「あ~ら、もう終わりですの、面白くないですわ、もっと苦しんでのたうちまわって死ねばいいのにい~。」
そういうと、女はしばらく中を漂っていた。
「あ~悪いことする人間を不幸にしたい、不幸にしたい、不幸のどん底に突き落として嘲り笑いたい。」
そう言いながら、女はふっと私の家の方向を見た。
私の背筋がゾクット寒くなった。
「お慶さ~ん!」いきなり、変な霊みたいなのが、私の部屋に飛び込んできた。
その霊は胸の黒いブラジャーから巨大な植木ばさみを取り出してきて、私の首めがけて大きくハサミを
開いて飛びかかってきた。
目が血走っているのが見えた。
首を切り落とされる!っと思ったとき、目の前に池内慶が現れて、細身の剣でその巨大な植木ハサミを
受け止めた。
池内慶の顔は真剣だった。
「池下斬ちゃん、この人はいい人だから殺しちゃだめだよ。」
そう言うと黒い長髪の女はにっこり笑った。
「あら、ごあいさつがわりですわ、お慶さんだったら必ず剣でうけとめるって分かっていたし。」
女のその言葉に池内慶は答える。
「でも、池下斬ちゃん、目が本気だったよ。」
池下斬はニンマリ笑う。
「あら~、本気ぐらいでやらないと面白くないじゃな~い。」
そういってご機嫌だった池下斬の顔が急に真顔になった。
「ん?」そういってあさっての方向を見る池下斬。
頭の上からピコッとキツネの耳のようなものが二つ出た。
「あの兄ちゃんが近くの病院の集中治療室に入ったようね、ちょっくら行って、
生死の境をさまよわせて、おちょくってあげようかしら。」
そう独り言を言うと、池下斬は池内慶の方をみてニッコリと笑った。
「また来るわね~、大好きなお慶さ~ん」
そう言って池下斬は霧のように消えていった。
なんかすごいのが来たな。
池下ってことは、ひょっとしてあと2人くらいあんなえでつないのがいるのかな。
そう思っていると、池内慶が怒ったような顔で私の顔を見た。
「だめだよ!なんでも怒りや暴力で解決しようとしちゃ!」
私は面くらった。「何言ってんだよお前。」
池内慶はじっと私の目を見て言った「霊の世界には波長の法則ってものがあるの、
だから、あなたが人に対して、怒りや憎しみ、呪いによって物事を解決しようと
思ってはだめなの!」
そう言われて私にも思い当たることがあった。
たしかに暴走族はうるさかったし、心の中で「くそっ、仕事ができねえよ、死ねよ。」とも
思ったし、「事故にでもあって死にやがれ。」と思ったけど、思っただけだよ。べつに、
自分で手を下して殺したわけじゃないし。
でも、それでも、その波長につられて、変な霊がよってきちゃうのなか。
世のなあむつかしいよな。
心の中で誰に対して「お前なんか死んじまえ!」って思ったことなんて、
誰にでもあるよねえ。それでもだめなのかなあ。
そう思ってると慶が「だめ!」と言った。
こいつ、いつも子供じみているのに、なにか要のときになると、
しっかりしたことを言うよな。
「ごめん」ちょっとはずかしかったが、私は少し赤面しながら、慶に謝った。
慶はにっこり笑って私の頭をなでて「いい子、いい子」と言った。
「でも、俺は絶対許せないと思った奴に対しては、これからも死ね!と思っちゃうかもしれない。
それは、とめられないよ。」私がそう言うと慶は「それはしかたないよ、でも、もしそう思っちゃったら、
必ず私にごめんって謝ってね。」と言った。
その横から池内忍が顔を出す。
「人間は、自分の残虐衝動、暴力衝動を正義だと正当化したとたんに、その残虐衝動が
暴走を始めて、人を踏みにじることが楽しくて楽しくてたまらなくなる。だから、
それは悪いことだって、自覚する歯止めが必要なんだよ、それくらい覚えとけバカ者。」
なんか慶に言われると素直に受け取れるけど、忍に言われるとムカつくなあ。
思わず「死ねよ馬鹿!」とか言いそうになったけど、その言葉を一生懸命飲み込んだ。
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特にTVとか見ててすっごいむかつく政治家とか^^;;
こういった念も、どこかで変な霊を作っちゃうのかな。
慶ちゃんの「謝ってね」という言葉が心に残りました。
自分の良心に謝ればいいのでしょうか?