「ああ・・・ヒマだなあ、いつまで続くんだこんな怠惰な日常。」
パソコンの前で必死に作業している私の横で池内剣がねっころがりながら言った。
一度は言ってみたいわそんな言葉。
「おい、お前、ヒマだから牛乳大王でマンゴー牛乳買ってこいや。」
ねっころがりながら池内剣が私に向かって言った。
当然ながら私は無視した。
ああ、こいつの顔、一度でいいから思いっきりふんずけたい。
色々毎日不安な日々だ。
出版した本は順長に売れ取るんだろうかとかいろいろ。
でも、気にしない気にしない・・・・・・。
と心の中で念じていると、背後で呟き声がした。「とんちんかんちん一休さん」
「うわっ!」と声を出して振り向くと、そこに智伯が居た。
「何言ってんだよ、お前!」私が言うと智伯は「いや、そちが心の中で「気にしない、気にしないっ」
などと念仏の如く唱えていた故、一休禅師が頭に浮かんだのだ。」智伯はそう言い、言葉をつづけた。
「なんなら、その前に考えてたことも言ってやろうか。」
「わあああああ!!!言うなあああ!!!」そう言って私はあわてて智伯の口を手でふさいだ。
池内剣が不審そうに私をにらむ。
「汚い手をはなせ」そう言いながら私の手の甲をつねった。
「いててっ!」私は智伯から手を離した。
「久しぶりに不動産情報を見に来た。見せよ。」智伯がそう言うので、私は
インターネットのサイトを不動さん情報を智伯に見せた。
「ああ、ここのマンションで中古の売り部屋ができたのか、ここの海辺のマンションはな、
昔マリンセンターと言って、市民プールがあって、巨大タコのオブジェがあったのじゃ。そして
その横の小学校がある場所は大きな海水プールがあって、そこでイルカを飼っていたのじゃ。
その昔、喜春城公園には猿がおっての、鹿も飼っておったかの、大観橋をわたった
西の場所に芝居小屋があっての、昔はよく人々の笑い声が聞こえていたものじゃ。」
などと嘘か本当か分からないことをぶつぶつ言っていた。
智伯は、ひとしきり不動産情報を見ると飽きたのか南の方へノコノコ歩いて行った。
すると、そこに松岡狼と松岡炎が現れて智伯に丁重に頭を下げていた。
智伯が手のひらを上にむけると、そこから徳利と杯が出てきた。
智伯はその杯を松岡狼と松岡炎にわたして、とっくりの中の酒らしきものをついでいた。
「またうちの神棚からお供えの酒をちょろまかしやがって。」と思っていると
智伯がキット目をつりあげて私の方を向き直った。
「無礼な!誰が酒を盗んだというか!これはサラダオイルじゃ!」
そういう智伯に私は呆気にとられた。
こいつら、サラダオイルなんか飲むのか。しかし、こいつらは神前か仏前にある食べ物、
もしくは私の思い出の中にある食べ物以外食べられないはずだ。
当然、私はサラダオイルなんて飲んだ記憶はない。
「無礼ものめ!そんな失礼なことを思ってたのか!これは智伯様に信者がお供えしたサラダオイルだぞ!」
松岡炎が怒鳴った。
なんだ、智伯って信仰者がいて、しかもお供え物ってことは祠をもっているのか。
「ねえ、智伯もサラダオイル飲むの?」私がそう問うと智伯は眉をひそめ、少し不快そうな顔をした。
「我は眷属ゆえ供物は食べぬ。よってこの者たちにおすそわけしておるのだ。」
智伯がそう言うの合点がいった。
私は松岡系にはエサを与えてないのに、松岡系がこの辺を徘徊しているのは、
こいつがエサをやってるからだ。
「この辺りを徘徊するノラにエサを与えないでください。」私がそう言うと、松岡系は
「ペットちゃうわ!」と大声で怒鳴った。
私の言葉を聞いた智伯の目がキランと光る。
「かく言うが、そちは近所の地域猫のとらちゃんに内緒でヤマザキナビスコのリッツを1枚たべさせたであろう。」
智伯の言葉を聞いて私は青ざめた。
「わー!ごめんなさい!1回だけです。とらちゃんがあまりにも可愛かったので!もう二度としません!」
私が謝ってしまった。
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