昔、私の家の近くに明幸園という園芸屋さんがありました。
そこで野村紅葉を買って家に植えました。ちょうど中学校に入学した年、
入学記念に植えたのですが、ナメクジに食われて枯れてしまいました。
それが残念でなりません。
その園芸屋さんは、だんだん規模を縮小し、最終的には無くなってしまいました。
その昔の事を思い出して、インターネットで明幸園という文字を検索してみると、
なんと、神戸市西区平野に引っ越しているではありませんか。
早速、私は平野まで行ってきました。
そこには沢山の綺麗な花があって、私は幸せになってしまいました。
家には大きな酔芙蓉の木があって、それがとてもきれいなので私は花が大好きなのです。
そこに、ひときわ美しい野村紅葉がありました。
葉の色は赤く、気品がありました。2500円です。
買っちゃおうかなあと心が揺らいだとき、慶ちゃんが出てきました。
「買っただめだよ!この子を買ったら、この子ばっかり可愛がって、酔芙蓉は捨てちゃうんだよ!」
「だから買っちゃだめだよ」
と言ってきます。
「そんなことしないよ、酔芙蓉も可愛がるよ」
と言うと慶ちゃんは
「嘘だよ!人間は嘘つきだよ!ずっと大切にすると言ったくせに捨てちゃうんだよ!」
と必死に怒鳴りました。
あまりに必死なので、せっかくの綺麗な野村モミジが買えませんでした。
買わないで帰ると慶ちゃんはご機嫌でした。
家に帰ってくると、私は慶ちゃんに聞きました。
「嘘つきって、昔、人間に何かされたの?」
すると慶ちゃんは言いました。
「小学校のお友達にもらった絵を取られたよ!」
と言ってかなり激昂しています。
ここまで起こる慶ちゃんを見るのははじめてです。
「人間どもよ、破壊神シヴァを侮るなかれ!」
なんか怒りすぎて、いつもと口調が違います。
「慶ちゃんってシヴァ神の化身とかそういうものなの?」
「違うよ!守護観世音聖天を侮るなかれ!」
激昂して慶ちゃんは叫びますが、言っている意味がよくわかりません。
でも、何かすごい精霊らしいことは分かりました。
「なんかすごいものを守ってるんだね、一体、何を守ってるの?秘密の結界かなにかあるの?」
慶ちゃんは真剣な目で私の顔を見て言った。
「なかよし保育園」
一瞬の沈黙。
「あっそ~、すごいね~」
私は軽くいなした。
冗談で言ってるのか嘘か本当か分からないことを言う慶ちゃんであった。
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