本来どうも草花の精霊というのは語彙が少ない。
慶ちゃんは精霊の中ではかなり最強の部類に入るらしく、よくしゃべる。
一般に草木の精霊はほとんど話さない。森の中に入って静寂の中、木に耳をあてていると
木の精霊の息づかいが聞こえてくるぐらいだ。
かなりの上級精霊になっても、花にお水をかけてもらったら「ぴゃー!」と言って手をあげるくらいだ。
あと、花の精霊どうしで「しゃー!しゃー!しゃー!」と言って会話している。内容はなくて、声のトーンで
相手が機嫌がいいとか悪いとか、そんな感じで意志の疎通をしているみたいだ。
イルカの超音波みたいなもんだろう。
慶ちゃんもお花とお話するときはよく「しゃー!しゃー!しゃー!」と言っている。
あと、言葉ではなくて、機嫌のいいときは手を上にむけて首をゆらゆら左右に揺らしたりする。
これは草木でも人間に褒められてうれしい時などにユラユラするらしい。
人間が気づいていないだけで。
花は褒められたら綺麗に咲くし、疎んじられたら咲かなかったり、枯れたりするらしい。
けっこうデリケートなのだ。
この前、ホームセンターに行ったら、初恋草の苗が売れ残って、枯れかけていて大割引で100円で
売っていた。ほとんど枯れかけている。
それを見た慶ちゃんが私のところに来て言った。
「ねえねえ、この草、○○(私の名前)ちゃんが買ってあげないと死んじゃうんだって」
笑顔で言っている。
「助けてあげたいの?」
「まさかあ、どうでもいいよ」
「あっそ」
私はその場を通り過ぎる。すると慶ちゃんが私の前に来て言う。
「あのこ、買ってあげないと死んじゃうんだってさ」
「そう、買ってほしいの?」
「別に~」
「あっそ」
私はまた歩き出すというか家に帰ろうとする。
「だからあ、あの子死んじゃうんだってば~!」
言いながら慶ちゃんは私の足にしがみついてゆっさゆっさゆらす。
「買ってほしいの?」
「うん}
慶ちゃんは頷いた。
私は初恋草を買ってかえった。
今、家に居ます。鉢に入れて育てたらけっこう元気になってきた。
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