「インゲン!インゲン!インゲン!楽しいインゲン!ゆかいなインゲン!インゲン!インゲン!いんげーん!」
私がスーパーでインゲン豆を買っている横で慶ちゃんと剣ちゃんが歌いながらラインダンスを
踊っている。
それを忍ちゃんがほおづえをついて見ている。
今日は母にたのまれてインゲン豆をお買い物だ。そのほかに枝豆も買った。
最近、健康を考えて野菜をおおくとっている。
野菜ってけっこう高い。
そのあとタマネギ3個とキーマカレーを買った。
すると慶ちゃんが私の前に回り込んで満面の笑みで私の目を直視した。
催促している。明らかにお供物を催促している。
でも、無理矢理買わせようとしないところがいじらしい。
本当は野菜だけ買う予定だったけど、
特別に忍ちゃんにはクリームチーズ、剣ちゃんには十勝スマートチーズ、慶ちゃんにはホイップメロンパンを
買ってあげた。
家に帰ると、親戚のおばさんが家に来ていた。
この人はよく家の庭の掃除とか庭木の剪定とかやってくれる良い人なのだが、
高砂芙蓉の枝を切りすぎで枯らせてしまったので、慶ちゃんはあまりスキではないようだった。
そのおばさんを無言でにらんでいる慶ちゃん。
久しぶりに来たので、山奥にある大型植木店明幸園に連れて行ってくれるという。
私は慶ちゃんを見た。
「慶ちゃん、あのおばさん嫌いだから一緒にいかないよね」
すると慶ちゃんは目を丸くした。
「いくいくー!植木だいすきー!」
現金だな。
車に乗って明幸園に行って、色々な植物を見た。
慶ちゃんはハイビスカスの近くに行って「しゃー!しゃー!しゃー!しゃー!しゃー!」とか
言ってしゃべっている。
木の言葉のようだ。忍ちゃんや剣ちゃんは興味がないらしく、私の背中にくっついてどよーんとしている。
慶ちゃんは特定の植物に興味があって、前はホームセンターのオクラの苗をみつけて、
買ってほしいとせがんでいた。
そこまで接触的におねだりすることはめずらしいんだけど。
ここの植木屋さんではハイビスカスにご執心なようだ。
でも、ハイビスカスは冬には枯れちゃうからなあ。
冬でも枯れないインドアハイビスカスってのがオランダで開発されてるそうだけど。
色々植木屋さんの中を見て回って、私は180円の小さなサボテンの月兎耳と子猫の爪ともうひとつ、
福娘みたいなぷくっとした多肉植物を買った。
それをみて、慶ちゃんは「カランコエ!」と叫んだ。
「ちがうだろ」私は笑った。
カランコエっていうのは葉がひろくれ赤や黄色の花が咲く園芸植物で
こういうサボテンとは似ても似つかない。
慶ちゃんは「カランコエ!」ってフレーズが好きだから適当に言ってるだけなんだろう。
ひととおり買い物を済まして帰ろうとすると、慶ちゃんが私の服の袖をひっぱる。
「78円だよ!」
「ん?」
慶ちゃんが指さす方を見ると、ドワーフコットンの苗が78円で売っていた。
こりゃ安い。
コットンは黄色い綺麗な花を咲かすのでかわいいが、耐寒性がないので、
普通は一年で枯れてしまう。かわいそうなので
買わなかったが、78円なら買っていいかなという気持ちがわいた。
78円といっても結局土を買ったり肥料をやったりしてもっとお金を使っちゃう事になるんだけど。
ドワーフコットンはコットンの中でも小さい方なので、冬に家の中につれてこれるかなとおもった。
ひょとして、冬に枯らさないで冬越しできるかもしれない。
私は78円のドワーフコットンを買った。
「78円さん!78円さん!」慶ちゃんがドワーフコットンに話しかけている。
「あら、馬鹿ね、あなたって、1000円で買ってきたハムスターの病気直すために
5千円払って、結局三年で寿命でおっちんだのを見て泣くタイプよね」
冷めた声で忍ちゃんが言った。
まあそうかもしれない。
結局、198円のプラスチックの鉢や387円の園芸用の土とかマグアンプやオルトランなど肥料、病害虫よけを
買ったので数千円の出費になった。
でも、78円のドワーフコットンの花がいつ咲くか、今年の一つの楽しみになった。
慶ちゃんは早速「78円さん」という名前をつけてかわいがっているようだ。
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