うちの父親と一緒にスーパーに買い物に行くのは、精霊たちにとって
とてもスリリングな体験のようです。
それは、父が精霊たちの事を知らないので、ランダムに品物を買い物籠に放り込むからです。
下手をすると、自分だけお供物をもらえない可能性があるのです。
今日もまた父と買い物に行きました。
いつも通り、いちごの前を素通り。
そのかわり、プチトマトをニコ買いました。
「また私はボッチなの、二人分しかかわないの?」
剣ちゃんが心配そうです。でも、そのすぐ後に父はフジッコのお豆さんを買いました。
「私のキター!」剣ちゃんは喜びます。別にお豆さんが好きというより、
最近はこれが剣ちゃんの定番になっているみたいです。
今横で「お豆さん好きだよ!」と言ってます。気に入ったようです。
「ねえねえ、今日も龍に乗ろうよ」
剣ちゃんが慶ちゃんに話しかけます。
慶ちゃんは買い物カートの買い物籠の一番前に座って、
ハンドルを操作するマネをして車運転ごっこをしています。
カートを使ってお買いものをするときは、慶ちゃんはよくこの車ゴッコをします。
「だめだよ!今は店の音楽でカントリーロードが流れているから、この音楽をやってるうちは
車の運転をするんだよ!」
慶ちゃんが言いました。
「あ~早く曲おわんないかしら。」
忍ちゃんが買い物籠の側面をバンバン叩きながら文句を言う。
「早く龍に乗りたいよ!」
剣ちゃんも不満そうです。
「おわれ!おわれ!」
剣ちゃんと忍ちゃんが合唱はじめました。
「あ~もう、うるさいなあ、車の運転ができないじゃんか!」
慶ちゃんが怒ります。
すると、剣ちゃんと忍ちゃんが狭い買い物籠の前方に汲汲詰めになって慶ちゃんと並んで
自動車を運伝するマネをはじめました。
「ぶっぶー!」
剣ちゃんが言います。
「むきょーっ!慶タンが運転手だよ!歌の文句にもあるでしょ!」
慶ちゃんが怒ります。
「あら、どんな歌よ」
「運転手は君だ、車掌はぼくだ!」
慶ちゃんが歌い始めてハッとして手ので口を押えます。
「しまった!運転手は君で車掌は慶タンだったよー!」
頭を抱えて買い物籠の中で転げまわる慶ちゃん。
プチトマトがつぶれるからやめて。
そうしているうちにカントリーロードの館内放送が終わった。
「よし、ドラゴンに乗るよ!」
慶ちゃんはドラゴンを出してきて、忍ちゃん、剣ちゃんを乗せて、スーパーの
空中をフワフワ遊泳する。上に行ったり下に行ったり、波状に揺れながらゆっくり前に進みます。
チーズ売り場の横を通っても素通りします。
なぜなら、前日に母が大量にクリームチーズ(5箱)買ってきて冷蔵庫に入れたからです。
父が乳ボウロをカゴに入れる。
「あら!私の乳ボウロよ!私の勝利ね!」
忍ちゃんが叫びます。
「いいもん、慶タンはぼんち揚げ買ってもらうもん」
慶ちゃんが宣言したあと、父は買い物籠にビスコを入れます。
「やったー!慶ちゃんはぼんち揚げだから、ビスコは私のだよね」
そう言って剣ちゃんが喜びます。
「しまったよー!慶ちゃんボッチなの?慶ちゃんがボッチなのー!」
慶ちゃんは叫びながら買い物籠に戻ってきて、ゆっさゆっさ買い物籠を揺さぶります。
私はあわてて、売り場からぼんち揚げを持ってきて買い物籠に入れました。
「ほっ、よかった。これで慶タンも一人前の社会人ですね」
私の方を見て慶ちゃんが笑顔で言った。
意味わかんねえよ。
そのあと、皮つき天津甘栗を買いに行ったが、もう売ってなかった。
しかたないので、皮がむけた甘栗を買って帰った。
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