最近、ときどき松岡良が私の周辺をうろちょろするようになった。
べつに私のことを気にしているわけではないが、気づかないうちに私との生活距離が近くなったのだろう。
この前母が茶道のお茶会をしたときも、松岡覇をつれて歩いてきていた。
お茶会になって炉で炭を焼いて茶釜をかけていると、いつも通り泰膳が来て、炭をつまんでかじっていく。
いつもどおり腰には魔法のひょうたんをぶらさげている。
泰膳にかじられた炭は黒から白に変色し、灰になってくずれてゆく。
お茶会に参加する女のひとたちがお茶会に出すおぜんざいを作るためにエプロンをして
せわしなく動いている。
茶釜に水を足すとき、炭にエプロンの火が引火すると危ないので、お手伝いの方がエプロンを
はずして、茶釜の横に置いて、茶釜に水を入れていた。
それを泰膳は茫然とながめている。
お水が入ってお手伝いの方がよそにいくと、また炭をつまんでかじって食べる。
そうしていと、茶釜がある部屋の横を松岡良と松岡覇が横切る。
泰膳はいつもどおり腰にさげたひょうたんの口をあけて松岡良の名前を呼ぼうとした。
しかし、首をひねる。松岡良の名前がわからない。
しかし、どこかで見たことがある。とりあえず、聞き覚えのある名前を読んでみた。
「綾波!」
泰膳の声に松岡良は振り返る。しかし、ひょうたんの中に吸い込まれない。
返事をしないからか?それとも名前が違っているのか?
泰膳は似たような容姿を頭の中で思い浮かべて必死に名前を探る。
「長門!」
そう呼ばれると松岡良の眉間に深いシワがよった。
「バラすい・・・」
泰膳がそう呼ぶより早く松岡良は泰膳の頭にヘッドロックをかけてギリギリと締め上げた。
「イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!」
叫びながらバタバタと泰膳は暴れたが頭が抜けない。
「助けてくれ!ギブアップ!タオル、タオルを投げてくれ!」
死に物狂いで叫ぶ泰膳。
「あ?タオルなんてねえよ。」
呆れ顔で松岡覇が近寄ってきた。
「タオルでなくても、布だったら何でもいい!イタイ!イタイー!早く投げて!」
手足をバタつかせながら必死に叫ぶ泰膳。
「しょうがねえなあ。」
松岡覇はあたりを見回して、目の前に落ちていたエプロンを拾い上げ、
泰膳のほうにむかって無造作に投げた。
それは、バサッと音を立てて広がり、松岡良の頭の上に落ちた。
松岡良は泰膳の頭にかけたヘッドロックをはずし、エプロンを手に持った。
黄色いエプロンだった。初夢に出てきたエプロン。
「・・・・・・・・・・・」
松岡良は無言のまま松岡覇の足に四の字固めをかけた。
「痛い!タイタイ!姉貴!何怒ってんのか訳わからねえよ!いたいたいたいたい!」
松岡覇は悶絶しながら叫んだ。
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例のエプロンは黄色だったのですね
最近は火鉢もなくなってしまいましたから 炭をかじる機会が少なくなって淋しいでしょうに
昔、田舎の法事で火鉢がいくつもあって そこに捨ててあるタバコに炭から火を移して煙をモクモクさせて イタズラして楽しんでいましたね
楽しい思い出がよみがえりました