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頭の中の池内慶

空想ファンタジーブログです。 私と脳内タルパたちの愉快なヨタ話。

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またイチゴの季節がやってきた

慶ちゃんたちはイチゴが大好きです。
最近は私があまり相手にしないので、ふてくされて家には出てこなくなりましたが、
スーパーに行くと、我慢できずに出てきます。
とくにイチゴが大好きです。
慶ちゃんはさちのかやさがほのかが好きです。
九州のイチゴが大好きですね。
忍ちゃんは奈良県のあきひめが大好きです。
姫という名前が特に好きみたいですね。
剣ちゃんは栃木県の紅ほっぺなど関東のイチゴが好きです。
でも、最近は奈良県のあきひめが慶ちゃんたちの間でも大流行しています。
この季節、イチゴの値段も安くなってワンパック300円前後で買えます。
3パック買って帰ると大喜びしてました。
「こんなに買って帰ったら、おなかが張り切れるまで食べられるわね!と忍ちゃんが言います。
「むひょー!もう我慢できないよー!」と言って慶ちゃんが買い物籠の中のイチゴをたべたふりをします。
彼女たちは精霊なので直接イチゴを食べるわけではありません。
イチゴ気を吸い取るのです。これは神社の眷属のお使いがお供え物の気を吸収して、
気を吸収された食べ物は風味が落ちて、お供え物のお下がりを食べたときに
風味がよくない、味けない感じがするのはこのためです。
神だなにお供えした洗い米などもご飯にまぜて炊いてたべたとき、風味が抜けた感じの味になります。
本来は、人間に憑依して、その味を味わうのですが(うちでは私に憑依する)今回は
我慢できずに買い物籠に入っている段階で慶ちゃんがイチゴの気を吸収しはじめました。
「ずるいわよ!」といいながら忍ちゃんもイチゴの気を吸収しはじめます。
「私も!」と言って剣ちゃんも吸収しはじめます。
いつもは、私が食べるぶん、1回にワンパック分くらいしか食べないし、ワンパックも家族で
食べるので、実質ワンパックの3分の一くらいしか食べないのに、
一人でワンパックぐらいのイチゴの気を吸収してしまったので、慶ちゃんたちは気分が悪くなってしまったようです。
「うげー!」と言って、慶ちゃんがその場でイチゴの気を吐き出してしまいました。
「もったいないわね!」と忍ちゃんが怒りますが、ゲロの匂いにあてられて、
自分もゲロゲローとゲロをはいてしまいました。
剣ちゃんも「しかたないなあ」と言いながらあとかたずけをしようとしましたが、
匂いにやられてその場にゲローと吐いてしまいました。
もちろん、慶ちゃんたちは私にしか見えていないし、私にしか匂いは感じません。
でも、私自身は周囲に、よくゲロを吐く赤ちゃんのおいでになる家のような
酸っぱい匂いが充満していました。
久しぶりに出てきたと思ったらこれかよ。

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バスさん


慶ちゃんの最近のお気に入りはブリキ製のバスのおもちゃです。
どこから持ってきたかわかりませんが、バスのブリキのおもちゃをもって
「ぶっぶー。はい、到着です。」とか言いながら、ひがな一日遊んでいます。
忍ちゃんは放置されてさびしいのか、ふてくされて寝ています。
剣ちゃんはキノコの絵本を読んでいます。
男の子がクマのぬいぐるみと一緒にキノコの国に旅に出て、悪者キノコと戦う話です。
ヒマワリの花のついたロープを円にして電車にみたてて夢の国に子供たちが冒険に行くお話です。
最近までは、「いないいないばー」の絵本がお気に入りだったのですが、ちょっと大きい子向けの
子供の本も読むようになったようです。
「いないいないばーの本」とは、くまさんやきつねさんやねずみさんが、ひたすら、
「いないいないばー」をする絵本です。
剣ちゃんはそれが大好きなのですが、みんなと一緒にいるときは恥ずかしいのでそれを隠しています。
最近、慶ちゃんがバスのおもちゃに夢中で、忍ちゃんはふてくされて寝ているので、
剣ちゃんは一人で絵本を読んでいます。

久しぶりのお買いもの

久しぶりに近所のスーパーにお買いものに行きました。
人間というものは、同じ行動ばかり繰り返していると飽きてくるものですが、
霊は同じことを繰り返すのが大好きで、人間が刺激を与えてあげないと、
ずっと同じことをしています。
一時期、池内系たちをほっておいて、かなり怒りを買ったらしく、
しばらく私の前に姿を現さなかったんですが、
電撃小説大賞に応募した小説の中に、脇役として出してあげたら、
喜んで、小説の中に出てくる地獄の亡者どもを殺しまくっていました。
それでだいぶん溜飲を下したようで、池内系の連中も、それ以後、
ちょくちょく私の前に姿を現すようになりました。
とはいえ、精霊とは楽しいことが好きで、温厚な性格の存在なので、
本当に誰か殺すわけではありません。
小説という空想の中で戦いごっこをするのが好きなのです。
それで、私の手助けもできるということで、とても喜んでやっていました。
小説とか、空想の世界にはいりこんで暴れたり、遊んだりするのは
大好きみたいですね。
実際の現世の人間の関係の中に入り込んでいったりするのは、
嫌いみたいです。
自分が人を束縛するのも嫌いだし、自分も束縛されるのが嫌いのようです。
自由に遊んでいることが一番好きだと言っていました。
スーパーに行くと、なすの煮つけが置いてあって、それを見つけた
池内慶は「あ!てんとう虫さんだよ!買って!買って!」と言いました。
そのあと、自分がおねだりしたことに気づいて、ちょっと顔をあからめ、
「あ、いや、てんとう虫さん奇麗だね、かわなくてもいいよ。」
と言い直しました。そのしぐさがかわいかったのでなすの煮つけを買ってやりました。
すると、それを横で見ていた池内忍が「あら、池内慶だけに買ってあげるの、ひいきするの、
あっそう、そうなのね、あんたはそういう性格なのね。あっそー。」
とブチブチ不満を言ってきます。面倒なので「じゃあ、何か買ってやるよ。」
というと「半額シールが貼ってある商品を買いなさーい!」と言ってきた。
それで、店の中を見渡して、半額シールの貼ってある商品を見つけたらしく、
私を誘導していった。
そこには、生こんにゃくがあり、半額シールが貼ってある。
「おでん作るわけでもないのに、これ、どうやって食えって言うんだよ。」
と言うと池内忍は「食べなくても他にも使い道あるでしょー、とっとと買いなさーい。」
とか言ってくる。
いや、ないない。
その近くにふじっ子のお豆さんが20円引きの安売りをしていたので、それを買い物かごに入れて、
「これで我慢しろ。」と言ってやった。
「まったく、役立たずの人間ね!」
そう言って池内忍は眉をひそめた。
その冷蔵食品の棚の向こうのほうに蒲鉾を売っているコーナーがある。
それを、池内剣が茫然と少し顔を上気させながらながめている。
池内剣の視線の先には「りらっクマ」の蒲鉾が置いてあった。
蒲鉾を薄く切ると、その断面がりらっクマの顔になってるやつだ。
「買ってやろうか?」と言うと、池内剣ははっと我に返り「いらんわい!」と叫んだ。
「あ、そう」私がそう言いながらその場を離れると、池内剣は少し残念そうに視線をしたに向けた。
青果売り場の横を抜けてレジに進むと、池内忍が声をあげた。
「あきひめよ!奈良のあきひめが売っているわ!これは事件よ!」
そう言いながら私の後頭部の毛を思いっきり引っ張った。
「いてて」ちょっと口から言葉がついて出た。
周囲の人たちが私に視線を向ける。
当然、池内系の姿は私にしか見えていない。
「あー、足がちょっと吊っちゃったなあ。」とわざとらしく説明口調で言いながら、
私は少し肩をすくめてイチゴ売り場に移動した。
奈良産のあきひめが売っていた。
池内忍の大好物である。
イチゴの棚はもうほとんどカラだった。
よく売れている。値段も298円と手ごろだったので、3パック買って帰ることにした。
「やったわ!最後に正義は勝つのよ!これこそセレブの勝利にふさわしいわ。」
そう言いながら池内忍は勝ち誇ったかのように胸を張った。
暇をもてあましたのと、久しぶりのスーパーなので、池内慶は私から離れ、
両手をいっぱい左右に伸ばし「キーン!」と叫びながらスーパーを走り回っていた。
タダ一人、剣だけはすこしうつむき加減で元気がなかった。
自分だけ何も買ってもらえなかったことがさびしかったんだろう。
私は蒲鉾売り場に行って買い物かごにりらっクマの蒲鉾を入れた。
「あっ!」池内剣がみじかく声をあげた。
「明日の朝ご飯で一緒に食べような。」私がそう言うと、
池内剣は「いや、そのオレは別にあの・・・・」と言葉を詰まらせたあと、
少し顔をあからめ、うつむきながら「・・・・ありがとう。」と言った。
「こいつう、かわいいなあ!」そう言って私がおもわず剣の頭をなでる。
それを見ていた池内忍が奇声をあげた。
「あーっ!一人だけ頭をなでられてる!インチキよ!サギよ!これはクマクマサギだわ!」
そう言うと、池内忍はお菓子売り場のキャラメルコーンの処に行くと、
キャラメルコーンの真ん中の丸いところを電話のダイヤルに見立てて、回すしぐさをし始めた。
最近の電話は全部プッシュフォンだからダイアル式の電話なんてないだろ。
本当にこいつらは昭和をひきずってるなと思った。
「あ、もしもし、警察ですか!今、クマクマサギを発見してました!すぐに逮捕してください!」
池内忍はキャラメルコーンの袋に向かってそういうと、「ガチャ!」と口で言いながら、
電話を切るしぐさをした。
まあ、それでお前が気がすむならそれでいいけどな。
私はと言うと、自分用にまるちゃんのインスタントカレーうどん、甘辛味と
いかなごを乾燥して作ってある「かなぎちりめん」を買っていった。
レジで会計を済ませていると、
店中、飛行機のマネをして走りまわていた池内慶が帰ってきた。
今日は、めずらしく三人とも笑ってご機嫌で店を出た。
久しぶりのスーパーでの買い物だった。

紅ほっぺ

このまえスーパーに行くと、果物売り場にイチゴの紅ほっぺが売っていました。
背中から池内剣が出てきて「紅ほっぺだ!紅ほっぺ!」と大声で叫びました。
大声に私は肩をすくめましたが、当然聞こえているのは私だけです。
前から池内剣がほしがっていたイチゴです。
何度か売り切れとかで買い逃していたので、買ってやろうと思いイチゴに手を伸ばしましたが、
背中から池内忍が出てきて毅然つした態度で胸をはって言葉を発しました。
「おまちなさい!この紅ほっぺの値段をご覧になったのかしら?」
そう言って池内忍が指さす方向を見ると「紅ほっぺデラックス425円と書いてあった。
通常イチゴ売り場のイチゴは289円から389円くらいまでが相場なので、これはちょっと高い。
「日本の国家予算が財政赤字にあえぐ中、こんな無駄遣いをしていいと思っているのかしら?、
子供たちの未来はどうなるのかしら!?同じ425円なら博多あまおうを買うべきよ!」
と横に並んでいるあまおうデラックスを指さした。
どっちにしろ、イチゴは買えって言うんだな。
「お前にはこの前、奈良のあきひめを買ってやっただろ。」そう言って私は買い物かごに
紅ほっぺを入れた。
「ひどい!これはひどい!これは国民に対する背信行為よ!次の参議院選挙で
あんたなんか落選いなさい!」そう叫びながら池内忍は背中にひっこんでしまった。
いやいや、私は別に政治家じゃないし、立候補なんてしてねーし。
イチゴを買ったあと、私の好きな宮崎産と熊本産のプチトマトを買ってかえる。
ひとパック148円、お買い得だ。
ふと、髪の毛を売ったお金で卵を買ってかえる大正時代の親子連れのことを思い出した。
今は安い時代で贅沢なものが食べられる。バナナだってひと房100円だ。
一時期、バナナダイエットが盛り上がって、店頭からバナナが消え、八百屋で800円で
売っていたこともあったバナナ。
一時は、納豆が店頭から消え、寒天が店頭から消え、困ったもんだ。
いまでは店頭に山積みでおいてある。
日本人は移り気だ。
わーっとも盛り上がってすぐに忘れてしまう。
背中から池内慶が出てきて私の袖を引く。
「見て!蟹カマボコが半額だよ!」
池内慶の声を聞いて池内忍も勢いよく背中から出てくる。
「きゃー!半額よ!半額シールが貼ってあるわ!これを買って日本の景気浮揚策にするのよ!
断固として購入を要求するわ!」
私も、けっこうカニカマボコは好きなので、3つ買って買い物かごに入れた。
「きゃー!半額よ!半額!」と言って池内忍が喜びの声をげた。
こいつらは別にカマボコを食べるわけじゃない。
半額というお得感を私が感じた、その精神エネルギーを食べえいるのだ。
とりあえず池内忍の機嫌が直ってよかった。
家に帰ってさっそくイチゴを洗い、「はい、池内剣のぶん」といってイチゴをほうばると、
池内剣が私のイチゴを食べた精神感覚を味わってよろこんでいた。
そのあと、池内慶や池内忍にやった。
あれだけあまおうを買おうと主張していたのに、紅ほっぺを食べる段になると、
池内忍も喜んで食べていた。
現金なもんだ。
あまおうも、粒が大きくてプリッとしてるので、今度買ってみようかなと思った。
イチゴを食べ終わると、父親が知り合いから非常に大ぶりのイチゴをもらって帰ってきた。
「紅清水」と呼ばれている幻の高級食材だ。
品種は「さちのか」だが、これを非常に厳選した特殊農法で育てたもので、
ものすごく甘くておいしい高級品だ。
地元の農家の知り合いの伝手がなければ、高級料亭のデザートなどでしか
お目にかかれない代物だ。
「キャー!紅清水よ!清水国明は犬わんわんわん!猫にゃんにゃんやん!カエルもアヒルも
があがあがあよ!」
紅清水を見て池内忍は歓喜の声をあげた。
父親が声をかける。
「知り合いからもらってきたんだけど食べるか?」
私は答えた。
「もうイチゴたべておなかいっぱいだからいらない。お母さんと一緒に食べなよ。」
それを聞いて池内忍は激怒して私の頭をわしづかみにした。
「何考えてるのよあんた!食べなさい!これは命令よ!」
しかし、私がおなかいっぱいで食欲ないのに無理にたべても、池内系たちはおなかいっぱいで
苦しい気分しかあじわえない。味なんてわからないから、こいつらのために無理に食べるわけには
いかないのだ。
「無理して食べても、お前らおいしさ味わえないでしょ、あきらめろ。」
そううと池内忍は悔しさに足をふみならしながら
「キー!なんてことなの!私は悲劇のヒロインよ!この荒ぶる気持ちを静めるためには、
死霊の盆踊りをBGMにビリーズ・ブート・キャンプを踊るしかないわ!」
と叫んだ。
池内忍はどこからかソニーベータマックスのビデオデッキを取り出してきて、
それをテレビに接続。
死霊の盆踊りの映画のビデオテープをビデオデッキに入れた。
「でも、ビデオデッキをテレビに接続しちゃったら、ビリーのDVD見られないよ。」
池内慶がつっこみを入れた。
それでも忍はかまわない。
「そんなの、私が大体おぼえてるわよ、いい?私の声に合わせて踊るのよ!」
そう叫ぶと池内忍はパンパンパン!と手を叩きだした。
「ハイ!ハイ!ハイ!あるある探検隊!あるある探検隊!」
その声に合わせて池内慶はノリノリで踊りを踊る。
池内剣は付き合いでやる気なさそうに踊っていた。

コロッケ

坂の上の海を一望できる場所に文筆の神様を祭った神社がある。
その丘を下ったところに駅がありむかしは駅前として栄えていた。
しかし、大店舗法改正によって、地域の一般人が経営している商店は壊滅し、
めっきり人も少なくなった。
唯一、元お肉屋さんをやっていたコロッケ屋さんだけが人気でポツンとそこだけ
残っている。
今はお肉屋さんは閉めてしまってコロッケだけをあげている。
揚げたてコロッケが食べられるお店なので人気があるのだ。
久しぶりにそこでコロッケを買った。
冷凍コロッケを油に入れるとジューッ!と音がしてコロッケが揚がる。
ジュワジュワジュアーっと油の中で音がする。
池内慶はこういう音が好きなので私の背中から出てきて
「じゅわじゅわじゅわー!」と口真似する。
すごくご機嫌そうだ。
コロッケがあがると、薄い木の船にコロッケを乗せてくれて、脂取り紙でくるんで、
その上から新聞紙でくるんでビニール袋に入れてお店の人が渡してくれた。
それを手にぶら下げて帰る。
「コロッケ!コロッケ!たのしいな~♪」と池内慶が鼻歌を歌っている。
「私にも持たせて!」池内慶が言った。
「だめだよ、お前持てないだろ。」私は答えた。
ためにし私は池内慶にコロッケの入った袋を差し出してみた。
池内慶はそれを取ろうとするのが、すかっと手が通り抜けてしまう。
私が頭の中で想像したものは掴めるが、現実のものはつかめない。
池内慶は泣きそうな顔をした。
「おいおい、そんなに泣きそうな顔をすうなよ、家に帰ったら味あわせてあげるから。」
私がそう言うと池内慶は首を横に振った。
そして私の左斜め前のほうに指をさした。
そこは、ただのコンクリート作りの家が建っていたが、目をこらすとそのコンクリートの色が
だんだん薄くなって透けていった。
イリュージョンの世界だ。幻影だ。
もしかして池内慶がコロッケを持ちたいので視界を幻影世界に切り替えたのか?
いや、池内慶はそんな強引なことはしない。
ほんの数百円のなすの煮つけを買ってほしいとおねだりするのにも気を使う子だ。
周囲の建物がだんだん薄くなっていく。そして、田園風景がひろがり、
縮緬の着物を着た母娘連れが見えた。母親は何か新聞紙に包んだものを
大切そうに手に持っている。
私の背中から池内忍がにゅーっと顔を出した。
「あの母親が髪の毛を切って売ったお金で卵を買ったのね。」
池内忍はそう言った。
「髪の毛って売れるのか?」
驚いて私が聞くと池内忍は呆れたような顔で言う。
「バカねえ、むかしは湿度計を作るのに女性の髪の毛を使ったのよ。これはたぶん
大正時代くらいの風景ね。」
それは知らなかった。おどろいて、ただ漫然とその風景を見ていたが、
「卵って一パック200円くらいのもんだろ?髪の毛ってそなに安いのか?」と
疑問に思って池内忍に聞くと、池内忍は
「何言ってるの、卵といえば昔は高級品よ、何もわかっていないのね。」
といった。
そんな昔のことわかるわけないよ。
そのうちおかっぱ頭の娘が母親のほうを見て「ねえねえ、私にも持たせて」と言った。
母親は「はいはい」といいながら卵を娘にわたす。
「わーい!」と言いながら娘はスキップしてとびはねながら歩くが、その拍子に転んでしまう。
「あらあら、だいじょうぶ」そう言って母親は娘にかけよるが娘は泣きそうな顔をする。
「ごめんなさい卵が卵が壊れちゃった・・・・・。」
すると母親はやさしげな笑顔をうかべた。
「そんなこと心配しなくてもいいのよ、あなたがケガをしなければ。それに新聞に包んでいたから
まだ食べられるわ、早く帰って卵焼きにしましょ。」
そう言って母親は頬笑みながら娘の頭のなでだ。
ああ、昔のお母さんって優しかったんだなあと思った。
そして、むかしむかし、大正時代このコンクリートで固められた壁の向こうに田んぼがあり、
あぜみちがあり、縮緬の着物を着た親子連れがあるいてたんだなあと思った。
昔は卵数個を買うのでも大変だったんだなあ、今は簡単に卵を買ってたべられるけど。
本当に日本は裕福になったんだなあとしみじみ思った。
コロッケは、家に帰って、池内系の名前を一人ずつ呼びながら食べた。
私が食べた感覚の思念を受取って池内慶はハフハフ言いながら喜んでコロッケを食べた。
池内剣も喜んで食べた。池内忍は「やっぱりセレブにはコロッケがお似合いよね。」と
言いながらコロッケを食べた。
そうなのか?

 

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