三月三日ひな祭りの日、
父親と一緒に買い物に行きました。父親は奮発してイチゴを二パックも買いました。
その前の日、忍ちゃんがイチゴをもらっていたので、この日は慶ちゃんと剣ちゃんがイチゴをもらいました。
そして次、父はせっかくの三月三日だということで、ひなあられを買いました。剣ちゃんは
前々からひなあられをほしがっていたので、どうしてもひなあられがほしいといいます。
でも、順番は忍ちゃんです。
「ひなあられほしいよ!」
剣ちゃんが言います。
「あら、それならイチゴを私にゆずってくれるのかしら」
「ううう……」
剣ちゃんは涙目になります。なぜなら、今回のイチゴは紅ほっぺで剣ちゃんが一番大好きな
イチゴで、なかなか手に入らないものだからです。
「あら、どちらもほしいなんてありえないわ。何か欲しいならば何か代償が必要なものよ。それに
ひなまつりの日にひなあられがほしいのはあなただけじゃなくってよ」
まあ、忍ちゃんとしては当然の主張です。
剣ちゃんは涙目になってしまいました。
そのあと、父はチョコレートとジャムパンを買い、チョコレートは慶ちゃんが取ったので、
ジャムパンが自動的に剣ちゃんに回ってきました。
慶ちゃんはいつもやるように、チョコレートの端をもって上下にバタバタ団扇をあおぐようにチョコを振って
遊びました。
いつもなら剣ちゃんもマネしてイチゴジャムパンをバタバタ振ったりするんですが、今日は
しょんぼりしてやりません。
「まあ、乗りが悪いわね、私が代わりにやってあげるわ」
忍ちゃんは剣ちゃんからジャムパンをひったくって上下にバタバタ振りました。
忍ちゃんはこのあそびはめったにやることはないんですよ。
いつもは冷ややかに二柱のやってる姿を冷笑しながら見てるだけです。
「あの……それ私のなんだけど」
剣ちゃんが涙を拭きながら言った。
「だまらっしゃい!あんたの乗りが悪いからこれは私が貰うことにしたわ。あんたはそこのひなあられでも
貰っときなさい!」
厳しい声で忍ちゃんが言った。
「え?いいの?本当にいいの?」
剣ちゃんは目をかがやかせた。
「うるさいわね、私は今、ジャムパンをバタバタ振るのでいそがしいのよ、まったくイヤんなっちゃう!」
言いながら忍ちゃんはジャムパンを上下にバタバタ動かした。
「忍ちゃんありがとう!」
剣ちゃんは満面の笑みで忍ちゃんに抱きついた。
「もう、暑苦しいわね、はあ忙しい、ジャムパンを上下に振る仕事が今日もはじまるわ」
忍ちゃんはすかした顔でジャムパンを上下に振り続けた。
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