洋梨を買った。
「これ、ラフランスって言うのよ」
忍ちゃんが言った。
「これはピアだよ」
剣ちゃんが言った。
「あら、ラフランスよ、何言ってるの」
「ピアだよ、ピア」
忍ちゃんと剣ちゃんが言い合いをしている。そこに自分もまぜてほしかったのか
慶ちゃんが真ん中に入ってきて叫んだ。
「ぴぎゃー!」
「あんた、何いってるの」
「ぴぎゃーじゃなくて、ピアだよ」
忍ちゃんと剣ちゃんに素で返されて慶ちゃんジョボーン。
私が押しているスーパーの買い物籠に乗って、そこに入っているカップラーメンを
叩いてリズムをとる。
「ボンボンボボガボンガボンボンボボンガボんが」
「おい、麺が折れてぼろぼろになるからやめろ。」
注意すると慶ちゃんはやめた。
またショボーンとした顔をしている。
結局、洋梨は剣ちゃんが貰うことになった。
なぜなら、この前、忍ちゃんは柿をもらったからだ。
慶ちゃんは裂けるチーズをもらってご満悦だった。
忍ちゃんは栗あんが入ったあんパンをもらって納得していた。
忍ちゃんはけっこう和風が好きなのだ。
帰りにエレベターに乗ると、今度はエレベーターの壁を叩いてリズムをとっていた。
最近の慶ちゃんのマイブームらしい。
家に帰ると、庭に置いてあった綿の苗が元気がなかったので家の中に持って入った。
綿は南国の植物なので、外においておくと冬には萎れて枯れてしまう。でも
多年草だから家の中に持って入っていたら、けっこう長生きするのだ。
これから、どれだけ長生きするだろうか。
「よかったね、よかったね」と慶ちゃんが綿の苗に話しかけていた。
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