父と一緒に買い物に行きました。
けっこう久しぶりです。
母に買い物を頼まれていたので、万能ネギと新タマネギを買いました。
そのあと、ハムカツとかに風味かまぼこを買いました。
慶ちゃんたちはおかずやすぐたべられないものは貰わない主義なので、
早くお菓子やパンなどを私達人間が買わないかそわそわしながら待っています。
そうしているうちに、冷蔵品コーナーへやってきました。
でも、いつも流れていた音楽「ごてあらぽー!」という声が聞こえてきません。
どうも、あのコマーシャルソングは止められてしまったようです。
夏が近くなって節電のためでしょうか。慶ちゃんと剣ちゃんはがっかりしています。
でも忍ちゃんは気にしません。
二柱ががっかりしている間に私の袖を引きます。
「いまのうちよ、いまのうちにカマンベール買いなさい!」
「ああ、いいよ」私はそう言って忍ちゃんの大好きなカマンベールチーズを買い物かごに入れました。
「しまったー!」
気づいた慶ちゃんが走り寄ってきます。
「ねえ、裂けるチーズは?裂けるチーズは?」
「もうカマンベール買っちゃったから買わない」
私がそう言うと慶ちゃんは頭を抱える。
「ちっきしょーっ!」
「よっ、小梅太夫!」
剣ちゃんがかけ声をかけます。
「今時小梅太夫とか言っても覚えてる人いないわよ」
忍ちゃんが冷めた顔で言います。
「そんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!」
言いながら剣ちゃんが踊っていました。
精霊たちがそんなことしている間に父はアイス売り場へ。
そして、ヨーロピアンアイスをカゴに入れました。
「ヨーロピアンだから当然私のものね」
そう言って忍ちゃんがアイスに手を伸ばそうとするのを慶ちゃんが止めます。
「だめだよ、忍ちゃんはカマンベールもらったんだから、次は慶タンか剣ちゃんの順番だよ!」
「ふう、しかたないわね、じゃあ、それ貰ったあとで交換してよね。」
忍ちゃんは小さくため息をつきます。
「慶タンがもらいっと!」
慶ちゃんはヨーロピアンアイスにタッチします。
「慶タンアイスもらったことあんまり無かったから、ほしかったんだよねこれ」
慶ちゃんは満足げな笑顔を浮かべます。
「何言ってるの、このアイスは私の持ち物と交換する約束でしょ」
慶ちゃんはにんまり笑う。
「たまには慶タンもアイスほしいもん」
「ひどい!そんな非道を行ってただですむとおもってるの?オーストリア帝国を敵に回すおつもりかしら!」
「黙れキーウイ!」
慶ちゃんが叫びます。
「キーウイはオーストラリア、っていうかニュージーらんどよ!」
忍ちゃんも言い返します。
そうしている内に忍ちゃんの後ろで剣ちゃんの声がします。
「アイスにタッチ!」
「え?」
愕然として忍ちゃんが振り返ります。
実は父が北海道アイスバーも買ったのでした。
「そんな、私の、私のアイスが」
「自分ばっか抜け駆けしようとするからだよー!
慶ちゃんが舌をレロレロ出してから買います。
「ひどい、ひどいわ、私だけひとりぼっちだなんて、ひどい、私が何をしたって言うの!」
叫ぶ忍ちゃん。
いや、色々やってるけどね。
「うううっ」
忍ちゃんが涙ぐむ。
それをみて慶ちゃんが驚く。
「大変だよ!忍ちゃんが泣いてるよ!忍ちゃんにもアイスをあげて!」
「あら、そこまで言ってくれるなら私にあなたのアイスちょうだいよ」
忍ちゃんと慶ちゃんの眼があう。
「ヤダ」
慶ちゃん即答。
「うわーん!私だけアイスがないよー!」
忍ちゃん泣く。
「大変だよ、誰か忍ちゃんを助けて!誰か!誰かアイスを持ったお客様はいらっしゃいませんかー!」
慶ちゃんはスチュワーデスさんのカッコウに変身して叫ぶ。
「お前だよお前」
私がそう言うと慶ちゃんは驚いたように私を見た。
「え、何がですかお客様」
「お前がアイスもってんだから忍ちゃんにやれよ、それですべて丸く収まるんだよ」
慶ちゃんはつぶらな瞳で私の顔をしげしげとみつけたあと、小首をかしげる。
「おきゃくさまー!だれかアイスをもったおきゃくさまー!」
私の言葉をガン無視して慶ちゃんは叫び続けた。
こいつ……。
そうしていると、願いが通じたのか、父が独り言をいう。
「このヨーロピアンアイス、おいしいからすぐなくなっちゃうんだよな」
そう言ってアイスに手を伸ばす。
「もう1個かっておこ」
その言葉を聞いて忍ちゃんが両手の拳を天に突き上げ、「えいどりあーん!」と叫びました。
「よかったね」「よかったね」
そう言って慶ちゃんと剣ちゃんと忍ちゃんが肩を組みます。
「らたらたらたらウサギのダンス!らたららたらたらたらたらたた!」
と歌いながらラインダンスを踊っていました。
仲がよろしいようで。
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