空想ファンタジーブログです。 私と脳内タルパたちの愉快なヨタ話。
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今日、坂の上の柿本人麿呂を祀る神社にお参りに行った帰り、
その神社の下にある公園を通りかかった。
そこでいきなり池内慶が背中から飛び出してきて叫んだ「かたつむりでんでんさんが死んじゃう!」
驚いて見ると公園の遊具のコンクリートと鉄柱でできた大きな滑り台が大型機材を使って壊されていた。
もう古いし、あのまま放置しておいたら危険なのだろう。それに、最近は少子化でこのあたりで
子供たちが遊んでいる姿も見たことがない。
無用の長物となったのだろう。
最近公園は子供の危険を考えて巨大ジャングルジムや回転遊具などが次々と撤去されている。
砂場も犬猫の糞尿で寄生虫の危険があるからという理由で埋め立てられている。
ベンチだけ。
ベンチと草花だけの公園。
それはそれでいいんだけど、最近の子供が家に閉じこもってゲームばっかりやっている気持ちが
少しだけわかった。
「しかたないよ、壊れて子供がケガしちゃだめでしょ、でんでんさんにバイバイいいなさい。」
私がそう言うと池内慶は「かたつむりでんでんさん、バイバイ!」と言って手をふった。
そのとき巨大ブルトーザーと巨大遊具の鉄柱が接触してこすれ、「キュイーン!」と
鳴き声のような音を出した。
「でんでんさんがバイバイ言ってくれたね。」
池内慶が私の顔を見て言った。
「そうだね」と私が答えた。
そして、その場を去った。
妙見山に住んでいるきつねのぼたんちゃん。
しばらくミントガムのにおいをかいで「くちゃい!」と言って飛び退くの何度も繰り返していましたが、
何日もやっているので、腹筋が鍛えられてウエストがスリムに!
でも、さすがに10日以上やっていると飽きてくる。
暇をもてあましているそんな時期に、遠い知り合いのきつねのおじさんが遊びに来た。
「お久しぶりじゃのお、ぼたんちゃん」
それは実に2千年ぶりの再会です。
「しばらくぶりだね、蟹面のおじさん、いつ霊界刑務所から出てきたの?」
そのきつねのおじさんは不思議なことに蟹のお面をつけている。
今では蟹と言えば松葉ガニなどで、人の顔の大きさより一回りも小さいが、
昔は偶然深海から巨大蟹の甲羅が浜に流れ着くことがある。
高足蟹という巨大な蟹の甲羅だが昔の人にとっては非常に珍しいもので、
このきつねは村人が峠を越えていると、草むらからこの甲羅をかぶって飛び出してきて、
脅かして村人の持っている食べ物を奪って生活をしていたのだ。
それを聞いた近所に住んでいた輪坂の主の大蟹が怒ってこの蟹面狐を捕まえて
封印していたのだが、最近この大蟹が藤子さんに退治されてしまい、封印がとけて
出てきたのだ。
「めっそうもない、ぼたんちゃん、おじさんはね、悪の巨大蟹と正義の戦いを続けてきたんだよ、そして、
ついに、その悪の巨大蟹を退治したので、こちらへ帰ってきたのさ!」
蟹面狐は胸をはっていった。
「へーおじさんってヒーローだったんだね、死んだお父ちゃんが、おじさんは泥棒して
霊界刑務所に入れられたんだって言ってたけど、あれは勘違いだったんだ。」
ぼたんちゃんは蟹面狐の言葉を聞いて素直に信じてしまい、目をかがやかせた。
「そうだよ、おじさんはへ、正義のために日夜戦っているんだ。ぼたんちゃんも正義のために
戦いってみないかい?」
蟹面狐のことばを聞いてぼたんちゃんは勢いよく何度も首を縦に振った。
「うん!うん!ぼたんちゃん、正義のヒーローになる!」
すると蟹面狐は自分の尻尾の中から安っぽい透明のプラスチックの筒を取り出してきた。
そこには容器の半分くらいまで水が入っている。
蟹面狐は自分の胸に手をさし入れて、そこから青白く光る人魂のような
魂を取り出してプラスチックの容器に入れて、
しゃかしゃか、上下に激しく振った。
すると、プラスチックの容器の中の水が見る間に真っ黒に濁った。
「ほーら、すごいだろ、魂の汚れがみるみる取れていく。」
蟹面狐がシャカシャカ振っているプラスチックの容器にぼたんちゃんは興味深く見入った。
その次に蟹面狐はぼたんちゃんの胸のほうに手を向けると、そこからまた、青白い魂が出てきた。
蟹面狐はそこに新しい水を入れて、シャカシャカふったが、水は全然黒くならない。
透明のままだった。
「ほら!こんなに魂が奇麗になった!」
ぼたんちゃんはそれを見て目を見張った!
「わあ、すごい!」
しかし、ぼたんちゃんは少し身構えた、昔お父さんが蟹面狐のおじちゃんは詐欺師だから、
言うことを信じちゃだめだって何度も聞かされていたんだ。
「で、でもだまされないよ!それを100万善徳とかで、売りつけるつもりでしょう!
そんなもの買わないんだから!」
ぼたんちゃんがそう言うと蟹面狐は悲しそうに首を横にふった。
「ああ、悲しいなあ、正義のヒーローがそんなことするはずないだろ、この魂洗浄機はタダであげるよ、
私はただ、世界に正義を広めたいだけなんだ。」
蟹面狐の言葉にぼたんちゃんは驚きの表情をした。
「タダでくれるんだ・・・・・ごめん、蟹面狐のおじちゃんは本当に正義のヒーローだったんだね。」
蟹面狐はゆっくりと首をたてに振る。
「うん、うん、そうだよ、ぼたんちゃんは正義のためにこの正義のヒーローセットをみんなに
広めて世界を幸せにすればいいんだ、そして、この魂の洗浄機に入れるための洗剤を
買わなきゃいけないんだけど、心配はいらない、この洗剤はたった300善徳という安い
お値段で1カ月も使える。誰も困らないんだよ、ただ、この正義のヒーローは会員制でね、
でも、心配はいらないんだよ、1か月たった1000善徳という安い会費なんだ。
しかも!その会費のうち、500善徳はその会員を紹介した会員に上納される。
そのうち、500善徳をもらった会員は400善徳を自分を紹介した会員に支払って
100善徳は自分がもらえるんだ!洗剤のお金300善徳と会費1000善徳も、
その会員を集めた上納金でまかなえば、なんとぼたんちゃんはタダで
ヒーロー会員になれるんだ!それだけじゃない!
ヒーロー会員を10人集めればパールヒーロー、50人集めればシルバーヒーロー、
100人集めればゴールデンヒーロー、1000人集めればダイアモンドヒーローバッチが
もらえるんだよ!!!!!!」
その蟹面狐の語る緻密な計画を聞いてぼたんちゃんはまさに驚愕した。
「世界を平和にできるヒーローになれるだけじゃなくてお金儲けまでできる!しかも
会員を集めるともれなくヒーローバッチをプレゼント!なんて革命的なシステムなんだああああああ!!!!!!」
ぼたんちゃんは、さっそく会員になって洗剤代と会費1000善徳を払ってスターターキットを
購入し、うちの家にやってきた。
てか、うちしか知り合いがいないらしい。
「ぼたんちゃんはダイアモンド会員になるんだよ!」
私に向かってぼたんちゃんは胸を張っていった。
「てか、お前、知り合いが池内系の3人とオレしかいないのに、どうやって1000人も
会員あつめるんだよ。」
私がそう言うとぼたんちゃんは得意げな顔をした。
「そんなこと、とっくに蟹面狐のおじちゃんから聞いたよ、私に4人しか知り合いがいなくても、
私が会員にした会員が1000人会員を集めてくるから、ぼたんちゃんは寝てても会員が
あつまるんだって。」
つか、人任せかい!
「こんなの相手にしてもしかたないよ」
そういって池内慶はどこかに行ってしまった。
「無視、無視」といって池内剣は背中を向けて海外版セガサターン・マスターシステムで
大魔界村をやっている。
池内忍だけは「胡散臭い話だ~い好き!」と言ってぼたんちゃんの話を聞いた。
「あのね、こうやってね」と言ってぼたんちゃんは
自分の胸に手をつっこんで魂を取り出して、透明のプラスチックの水の入った容器に入れて
シャカシャカ振る。
水はきれいなままだ。
「ほら、こんなにキレイ!」
そして、次は池内忍の胸に手を向けて魂を取り出し、プラスチックの筒の中に入れてシャカシャカ振った。
とたんに水は真っ黒に変色した。ドス黒い鮮やかな黒さ。
「なによアンタ!全然汚れ取れてないじゃないの!それに私の心は真っ白の純白よ!詐欺よ!これは
サギだわ!とっととカエレ!」
池内忍は怒ってどこかに行ってしまった。
ぼたんちゃんは泣きそうになりながら、救いを求めるような目で私をみた。
「オレがそんなのに引っかかるわけねーだろうが、バーカ!」
私は冷徹にぼたんちゃんを突き放した。
「うわーん!正義の心なんて誰もわかってくれないのよー!」
ぼたんちゃんは泣きながら走って逃げていった。
家に帰ったぼたんちゃんは悶絶して転げまわって悔し涙に泣きくれていた。
するとそこにまた、蟹面狐が現れた。
「どうしたんだい、正義のヒーロー、ぼたんちゃん。」
ぼたんちゃんは、泣き腫らした目で蟹面狐を見た。
「あのね、あのね、みんなが正義の心をわかってくれないの!」
蟹面狐はやさしくぼたんちゃんの頭をなでる。
「だいじょうぶだよ、ぼたんちゃん、そんなときは、この健康食品をお友達のみんなに
売ることによって、みんなを健康で幸せにしてあげるんだ。」
と言いながら健康食品セットの詰め合わせセットをぼたんちゃんの前に出してきた。
そんな蟹面狐の後ろになにやら気配がした。
蟹面狐はその気配に気づいて素早く振りかえった。
そこにはアルマーニの背広を着て、片手にノートパソコンを持って銀フレームのメガネをかけた
狐が立っていた。
「こんにちわ、お狐倫理向上委員会の中村と申します。」
そう言って狐は蟹面狐に名刺を渡した。
「は、はあ・・・・。」
突然のことでどう対処していいのかわからず困惑しながら名刺を受取る蟹面狐。
「困りますねえ、そんな時代遅れのサギを広めてもらっちゃあ、お狐はつねに時代の
最先端を行ってなきゃだめなんです。私たちはタヌキとはちがうんですよ、タヌキとは。」
中村狐は厳しい表情でそう言った。
「そ、そんなこといってもなあ、私だって2000年も封印されてて現代の事情はよくわあらないんだよ、
それでも、色々勉強してやってるんだからね!」
蟹面狐の言葉に中村狐は小さくため息をつく。
「あのね、おじいちゃん、いまどきリスクを負ってまで1000善徳や2000善徳のはした金とっても
ペイしないんですよ。時代は億ですよ億!」
中村狐の億という言葉に蟹面狐は敏感に反応した。
「億!」
その表情を冷静に観察しながら、中村狐はあくまで無表情に言葉をつづけた。
「おじいちゃん、いままで封印されていた霊界結界の土地がありますよね、あそこに霊界
アパートを建てるんです。なに、資金面なら心配はいらない、私どもの会社、お狐建宅が
よい銀行を御紹介してさしあげて、土地を担保にするだけで、全額御融資させていただきます。
もし、入居者がいなかったらどうしようとお悩みでしょう、でもそれも心配いりません。
わが社が30年一括借り上げをしてさしあげます。わが社が家賃額のたった70%を
いただくだけで、残り25%は銀行への借金返済、おじいちゃんは何のリスクもなしに、
家賃の5%もの多額のお金をノーリスクで手に入れることができるんですよ。
こんなおいしい話はないでしょ。」
その話を聞いて蟹面狐は目をかがやかせた。
「ノーリスク、なんて魅力的な言葉・・・・・・・私みたいなもんがアパートのオーナーなんかに
なってもいいんかいねえ?なんか不安でしかたがないんだが。」
蟹面狐がそういうと中村狐は優しく微笑んだ。
「だいじょうぶですよ、おじいちゃん、おじいちゃんは契約書にサインをするだけでいいんです。
あとは、私たちが全部やってさしあげますから。」
そう言って、中村狐は笑顔で蟹面狐の手を引いて去っていった。
以後、蟹面狐の姿を見たものはいない。